先日、不動産を複数棟保有している社長からこんな相談を受けました。「SPC(特別目的会社)を使って節税しているんですが、税務調査が入ったらどうなりますか?」と。

話を聞いてみると、管理費や業務委託費などの名目でSPC間にお金を動かしているものの、実際の業務実態は曖昧で、契約書だけ形式上整えている状態とのこと。正直に言います。これ、かなり危ない状況です。

不動産SPCが「調査の優先ターゲット」になっている現実

不動産SPC(Special Purpose Company)は、不動産の取得・保有・運営を目的に設立される特別目的会社です。グループ内に複数のSPCを設けることで、収益の分散や経費の計上、相続対策などに活用されています。

スキームとしての合理性がないわけではありません。ただし、税務当局は近年、このSPCを使った節税スキームに対して調査リソースを重点的に投入しています。国税庁の重点調査分野として「同族法人間・グループ内の取引」が毎年挙げられており、SPCはその典型的な対象です。

調査官が実際に何を見ているか

税務調査でSPC関連の取引を確認するとき、調査官が最初に求めてくるのは「業務委託契約書」や「管理委託契約書」です。でも、契約書があれば終わり、ではありません。

「実際にその業務は行われたのか」という点が、徹底的に調べられます。具体的には次のような観点です。

  • 役務が実施されたことを示す記録(報告書、議事録、メール等)があるか
  • 支払った報酬額が、市場相場や業務量から見て妥当な水準か
  • グループ内取引として、価格決定の根拠が文書化されているか
  • 発注側と受注側が実質的に同じ人物・意思決定によるものでないか

書類が整っているように見えても、業務の実施記録がない、あるいは報酬が突出して高い——そういうケースは、調査官の目にはすぐ引っかかります。

「仮装行為」と認定されると何が起きるか

実態のない経費計上は、税務上「仮装行為」と見なされます。意図的に所得を隠したと判断されるケースで、これが認定されたときのペナルティは非常に重い。

通常の申告漏れであれば、過少申告加算税(10〜15%)で済む場合がほとんどです。しかし仮装行為と認定されると、重加算税35%が適用されます。つまり、追徴される本税に対して、さらに35%が上乗せされるわけです。

1億円の節税が、1億3500万円の請求になるケース

たとえば、SPC間の取引を通じて1億円分の費用を計上し、法人税等の節税効果を得ていたとします。税務調査でそのスキームが崩れた場合、単純に1億円の所得が復元されるだけではありません。

追徴される法人税・地方税(法人実効税率約30%として約3,000万円)に、重加算税35%が加わると約1,050万円。さらに延滞税(調査時期によっては数年分)も発生します。スキームの構築・維持コストも含めれば、トータルの損失が1億3,500万円を超えるケースも現実にあります。

節税のつもりが、大幅な損失につながる——これが「重加算税案件」の怖さです。

今すぐ確認しておきたい3つのポイント

SPCを活用した節税スキームを持っている方は、一度立ち止まって次の点を確認してください。

① 業務の実施記録が残っているか 管理業務や業務委託の内容が、報告書・メール・議事録などで証跡として残っているかどうか。契約書だけでは不十分です。

② 報酬設定の根拠を説明できるか 「なぜこの金額を支払っているのか」を、業務量・市場相場・役割などから合理的に説明できるかどうか。根拠が曖昧なまま高額報酬を計上していると、危険信号です。

③ 形式と実態が一致しているか 組織上の決裁フローや取引の意思決定プロセスが、書類上の体裁と実態として一致しているか。オーナーが全てを一人で決定している場合は特に注意が必要です。

「節税スキーム」は持ち続けることが仕事

スキームをつくって終わり、ではないんです。節税の仕組みは、導入後も「実態の維持・記録の蓄積・定期的な見直し」を継続することで初めて有効に機能します。

今のSPCスキームに少しでも不安があるなら、税務調査が入る前に、顧問税理士と一緒に実態整備の棚卸しをしておくことを強くおすすめします。調査官が来てからでは、できることの選択肢がぐっと狭まります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。