先日、年商4億円ほどの不動産会社を経営する社長から、こんな連絡が来ました。

「個人でビットコインを売ったら、思ってた以上に税金を持っていかれた。法人で持てばよかったって聞いたんだけど、本当?」

結論から言うと、本当です。ただし「法人で持てば必ず得」というほど単純な話でもないので、今日は少し丁寧に整理してみます。


個人で持つと、利益の半分以上が消える

個人が暗号資産を売却したときの利益は「雑所得」に分類されます。給与や事業所得と合算されるため、年収が高い社長ほど税率が跳ね上がります。

所得税と住民税を合わせると、最大で55%の税率が適用されるケースもあります。たとえば1,000万円の売却益が出たとしたら、手元に残るのは450万円前後。それだけ聞くと、少し怖くなりませんか。

「暗号資産で儲けた」と喜んでいたのに、確定申告の時期に青ざめる社長を毎年のように見ています。


法人で保有すれば、税率は約23%に抑えられる

法人が暗号資産を保有・売却した場合、その利益は法人の所得として扱われます。中小企業の法人税実効税率はおおよそ23〜25%程度です。

個人の最大55%と比べると、その差は歴然です。同じ1,000万円の利益でも、法人経由なら750万円以上が手元に残る計算になります。

もちろん、法人から個人にお金を出すときには役員報酬や配当として課税が生じますが、タイミングや金額をコントロールできる点が個人保有との大きな違いです。トータルで設計すれば、節税余地はかなり広がります。


「期末時価評価」には気をつけて

ただし、法人保有にも落とし穴があります。それが期末時価評価課税です。

法人が暗号資産を保有している場合、売却していなくても期末時点の含み益に対して課税される制度があります。「売ってもいないのに税金が発生する」という、少し理不尽に感じる仕組みです。

ただし、これには例外があります。短期売買目的ではない、いわゆる「活発な市場が存在しない暗号資産」や、保有目的が投機ではないと認められるケースでは、時価評価の対象外になることもあります。

ここが税務の難しいところで、保有する暗号資産の種類と、その保有目的をどう設計するかが、税負担を大きく左右します。


年商3億超の社長なら「持株会社スキーム」も視野に

さらに一歩進んだ話をすると、年商3億円を超えてくると、持株会社(ホールディングス)を活用した保有スキームが選択肢に入ってきます。

事業会社とは別に資産管理会社を設立し、そこで暗号資産を保有する構造です。グループ通算制度を活用したり、将来の相続・事業承継を見越した設計がしやすくなるというメリットがあります。

もちろん、コストやリスクも伴いますので、「スキームを作ること」が目的にならないよう注意が必要です。あくまで事業や資産の実態に合った形を選ぶことが大前提です。


出口戦略を最初に設計する

暗号資産の税務で最も重要なのは「出口戦略」と「保有目的の設計」です。

買うときに「どうやって出るか」を決めておかないと、含み益が膨らんだときに身動きが取れなくなります。売るに売れず、法人に課税が積み上がり、最終的に個人に引き出せない状態になってしまうケースも実際にあります。

逆に、最初から目的・期間・出口を明確にしておけば、税率の選択肢も広がりますし、資金効率も高められます。

暗号資産を「なんとなく持っている」状態が一番危険です。持つなら設計を、設計するなら税理士への相談を、買う前に済ませておくことをおすすめします。


すでに個人で暗号資産を保有していて、これから売却を考えている方は、今からでも遅くありません。売却のタイミングと方法によっては、税負担を大きく変えられる余地があります。まず一度、担当の税理士に「法人経由にしたらどうなる?」と聞いてみてください。その一言が、数百万円の差になることもありますよ。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。