先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。
「毎年それなりに利益が出ているのに、なんで税金がこんなに増えるんだろう。顧問税理士には決算書を作ってもらってるけど、もっと手を打てることがある気がして……」
そのとき私が真っ先に聞いたのが、「研究開発費の税額控除、使っていますか?」という一言でした。
課税所得を減らすより、税額を直接削るほうが強い
節税の手段というと、経費を積み上げて課税所得を圧縮するイメージを持つ方が多いと思います。でも、研究開発費の税額控除はそれとは次元が違います。
課税所得を1000万円減らした場合、税率が約30%なら節税効果は300万円。でも税額控除は、算出された税額そのものから直接マイナスできます。つまり、控除率が10%なら1000万円の研究開発費に対して100万円をそのまま税金から引けるということです。
一見すると控除率10%は地味に見えるかもしれませんが、実効税率への影響は決して小さくありません。
年商3億・利益5000万円の会社でシミュレーションしてみる
具体的に数字で見てみましょう。
年商3億円、税引前利益5000万円の会社があったとします。法人税・地方法人税などを合わせた実効税率をおよそ34%と仮定すると、納税額は約1700万円になります。
ここで研究開発費を1000万円計上した場合、まず課税所得が4000万円に下がります。さらに中小企業向けの税額控除率(最大12〜14%程度)が適用されれば、税額から追加で100万円超を直接引けます。
トータルで見ると、実効税率にして6〜8ポイント近い差が生まれることもあるんです。毎年積み重なれば、数百万円単位の差になります。
「うちには研究開発なんてない」と思っているあなたへ
ここで多くの社長が「自分たちには関係ない」と思って話を止めてしまいます。でも、それはもったいない。
税法上の「研究開発」は、白衣を着た研究者がいる製薬会社だけの話ではありません。たとえば、こんなケースでも対象になることがあります。
- 自社で開発した業務効率化のシステムやツール
- 新製品・新サービスの試作・検証にかかった費用
- 既存製品の機能改善に向けた技術的な取り組み
要件のポイントは「試験研究のために要した費用かどうか」です。ソフトウェア開発、新商品の試作、製造プロセスの改善など、意外に幅広い活動が対象に含まれる可能性があります。
もちろん、何でも通るわけではありません。「既存の技術の単なる繰り返し」や「市場調査費」などは対象外です。きちんと要件を満たしているかの確認が必須です。
税額控除には上限と期限がある
便利な制度には必ず注意点があります。研究開発費の税額控除も例外ではありません。
まず、控除できる金額には上限があります。法人税額の25%(中小企業の場合は一定の要件で最大35%程度)が控除の上限です。利益が少ない年や赤字の年には、せっかくの控除が使い切れないこともあります。
また、この制度は毎年内容が改正される部分もあるため、「去年は使えたから今年も同じ」という思い込みは禁物です。とくに中小企業向けの特例は適用期限が設けられているものもあるので、毎期の確認が重要です。
そして見落としがちなのが「書類の整備」です。試験研究費として認めてもらうためには、何のために、いつ、いくら使ったかを記録しておく必要があります。後から「あの作業も研究開発だった」と言い張っても、証拠がなければ通りません。
顧問税理士への確認は「今期中」に
この制度の最大の落とし穴は、「知らないまま申告してしまう」ことです。税額控除は原則として確定申告時に適用申請が必要なので、決算が終わってから気づいても遅いのです。
今期の決算が近い方は特に急いでください。来期以降を視野に入れている方も、今から費用の記録と分類を意識するだけで、大きく変わってきます。
まずは顧問税理士に「うちの事業で研究開発費の税額控除は使えますか?」と一言聞いてみてください。それだけで数百万円の話になる可能性があります。毎年払い続けている税金に、まだ削れる余地が残っているかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。