先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「うちの工場の屋根に太陽光パネルを載せようと思っているんだけど、節税になるって聞いて。でも最近は使えなくなったとも聞いたし、実際どうなの?」

この質問、最近ほんとうによく受けます。確かに太陽光発電をめぐる税制は目まぐるしく変わってきたので、「もう旨みはない」と思っている方も多いのですが、実はそれ、少し誤解があります。

結論から言います。今でも使えるケースがあります

具体的に言うと、中小企業経営強化税制を活用することで、太陽光設備の取得費用を購入した年に全額経費化、いわゆる「即時償却」できる場合があります。2024年度も引き続き対象になり得る制度です。

仮に5,000万円の設備を導入した場合、法人税率を約30%とすると、単純計算で1,500万円の税負担を先送りできる計算になります。「先送り」と書きましたが、キャッシュが手元に残るタイミングが早まるという意味では、資金繰りへのインパクトは非常に大きい。決算前に5,000万円の設備を買って、翌期に1,500万円が手元に残るようなイメージです。

どんな制度なのかを押さえておきましょう

中小企業経営強化税制は、中小企業が一定の設備投資を行う際に、即時償却(全額その年に経費化)か、取得価額の10%相当の税額控除を選択できる制度です。太陽光発電設備はこの対象に含まれ得ます。

ただし「含まれ得る」という表現を使ったのには理由があります。この制度にはいくつかの壁があるからです。

まず設備の種類。すべての太陽光パネルが対象になるわけではなく、一定の性能要件や経営力向上計画への記載が求められます。次に事業類型。自家消費型か売電型かによっても判断が変わります。そして認定要件。経営力向上計画を事前に主務大臣に申請・認定してもらう必要があり、購入後に申請しても認められないケースがあります。

「あとから申請すればいい」は危険です

この制度で一番多い失敗が、設備を先に購入してしまってから「あ、申請しなきゃ」と気づくパターンです。経営力向上計画の認定は原則として設備取得前に完了させる必要があります。

要件を満たさずに即時償却を適用してしまった場合、税務調査で否認されると追徴課税が発生します。節税どころかマイナスになるリスクがあるのです。これは笑えない話で、実際に「取り戻せない痛手」を負った会社の話を私も何度か見聞きしています。

実際に使うための3つのチェックポイント

制度を正しく活用するために、最低限これだけは確認してください。

ひとつ目は自社が中小企業に該当するか。資本金1億円以下などの要件があります。グループ企業の場合は大企業の子会社として除外されるケースも。

ふたつ目は設備が対象類型に当てはまるか。太陽光の場合、「生産性向上設備(A類型)」または「収益力強化設備(B類型)」のどちらで申請するかによって必要な書類が変わります。

みっつ目は経営力向上計画の申請タイミング。前述の通り、設備取得前に認定を受けることが基本です。計画策定から認定まで数週間かかることも多いので、導入を検討し始めたらすぐに動き出す必要があります。

太陽光投資の節税、どんな会社が向いている?

この制度が特に威力を発揮するのは、その年の利益が大きく出ていて、節税原資がある会社です。利益が薄い年に無理に設備を買っても効果は限定的。「今期は利益が出すぎてしまった」というタイミングで、かつ自家消費型の太陽光導入を検討しているなら、真剣に試算してみる価値があります。

逆に、純粋に節税目的だけで太陽光を導入しようとするのはおすすめしません。設備の維持管理コストや耐用年数、撤去費用まで含めたトータルの収支計算が必要です。節税は「副産物」として享受するくらいの感覚で考えておくと、判断がブレません。

今期中に一度、税理士と試算してみてください

太陽光の即時償却は「終わった話」ではありません。ただし「誰でも簡単に使える制度」でもない。要件の確認と計画的な申請が不可欠で、思い立ったときにはすでに期限が迫っているケースも多いです。

「うちでも使えるのかな?」と少しでも気になった方は、次の顧問税理士との面談のときに「中小企業経営強化税制で太陽光を即時償却できますか?」と一言聞いてみてください。その一問が、数百万円〜数千万円の差を生むことがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。