先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。

「5年前に船舶リースに1口5,000万円出資したんですが、今年満期を迎えて売却益が出て……正直、節税どころか税金がえらいことになってしまいました」

話を聞くと、出資のタイミング、金額の設計、そして満期後の出口——そのすべてが場当たり的だったんです。

オペレーティングリース、特に船舶やヘリコプターを対象にした大型スキームは、正しく設計すれば非常に強力な節税ツールです。ただ、それだけに「やり方を間違えると億単位で損をする」という怖さもあります。今回は実際によくある失敗パターンを3つ、順番にお伝えします。


3位:「決算直前に動いた」タイミングのミス

オペレーティングリースの仕組みをざっくりおさらいすると、匿名組合に出資することで、組成初年度に損金算入が集中するという特性があります。つまり、出資したその期に大きく利益を圧縮できるのが最大の魅力です。

ただし、ここに落とし穴があります。組成されたリース案件に参加するには、当然ながら「席が埋まる前に申し込む」必要があります。人気の船舶・ヘリ案件は早ければ数週間で満口になることも珍しくありません。

決算の1〜2ヶ月前に焦って探しても、良い案件はほぼ残っていません。遅くとも決算の3ヶ月前には動き始めるのが最低ラインです。できれば半年前から情報収集しておくのが理想です。

「今期の利益が思ったより出てしまった」と気づいてから探し始めると、間に合わないか、残っている案件の中から妥協して選ぶことになります。その結果、スキームの質が落ちてリターンが悪くなるケースも実際に起きています。


2位:出資額の「設計ミス」で翌期に課税が逆襲する

船舶やヘリコプターを対象としたオペレーティングリースは、1口あたり3,000万円〜1億円規模になることがほとんどです。中には複数口まとめて出資する社長もいます。

問題は、「今期の利益を消したい」という動機だけで出資額を決めてしまうケースです。

初年度に損金算入できる金額が大きい一方で、2年目以降は損金算入額が減り、逆に益金算入が始まることもあります。さらに言えば、満期時の売却益は通常の益金として課税されます。つまり今期を抑えると、翌期以降に課税が集中するという構造になりやすいんです。

利益の波がある会社、たとえばここ数年が特需で利益が膨らんでいるが来期は落ち着く見込みの会社などは、キャッシュフローと複数年の利益予測をセットにして出資額を決めないと、「節税のつもりが課税の前倒し」になってしまいます。

ここは必ず顧問税理士と複数年シミュレーションを作った上で判断してください。


1位:「満期後の出口戦略」を何も考えていない

最も深刻で、かつ最も多い失敗がこれです。

船舶・ヘリのオペレーティングリースは、運用期間が5〜7年程度あります。その満期時に、リース資産の売却益が発生します。これが一気に課税所得として圧し掛かってくるんです。

出資当初は「損金が出て節税できた」と喜んでいた社長が、5年後に「売却益で多額の法人税が発生した」と青ざめる——これが冒頭の相談者の話でもありました。

節税効果を本当の意味で享受するためには、満期のタイミングで別の損金対策をあらかじめ組み合わせる必要があります。具体的には、別の設備投資や新しいオペレーティングリースへの乗り換え、あるいはM&Aを活用した株式譲渡スキームとの組み合わせなどが選択肢に挙がります。

ただしこのあたりは、会社の規模・業種・将来計画によって最適解がまったく異なります。「5年後の出口をどうするか」を最初の出資判断の時点で設計しておくのが大前提です。出口を決めずに入るのは、ゴールを決めずにマラソンを走るようなものです。


大型リースは「設計力」がすべてを決める

船舶・ヘリコプターを使った大型オペレーティングリースは、正しく設計すれば確かに強力です。億単位の利益圧縮ができるスキームは、他にそう多くありません。

だからこそ、①タイミング、②出資額の複数年設計、③満期後の出口——この3つがそろって初めて「機能する節税」になります。どれか一つが抜けるだけで、節税効果が大幅に薄れるどころか、かえって課税が増える結果になりかねません。

もし今期の利益が大きく出そうで大型スキームを検討しているなら、まずは今の顧問税理士に「複数年のキャッシュフローシミュレーション込みで相談したい」と切り出してみてください。それができない、あるいはそういった提案を受けたことがないなら、大型節税スキームを扱い慣れた専門家への相談も選択肢に入れてみる価値があります。

「知っている」と「設計できる」の間には、大きな差があります。億単位の意思決定だからこそ、その差を軽く見ないようにしたいですね。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。