先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。
「今期、利益が4000万円を超えそうで……。税金で半分近く持っていかれると思うと、決算が怖くて仕方ないんです」
業績が上がるのは喜ばしいことのはずなのに、決算が近づくほど憂鬱になる。そんな経験をお持ちの社長、実は少なくありません。そこで今回は、そういった局面で使える選択肢のひとつ、船舶オペレーティングリースについてお話ししようと思います。
航空機リースの「船バージョン」と考えると分かりやすい
「オペレーティングリース」という言葉、航空機絡みで耳にしたことがある方も多いかと思います。船舶リースはその仕組みをそのまま大型船舶に応用したものです。
簡単に言うと、複数の投資家(法人)がお金を出し合って大型船舶を購入し、それを海運会社に貸し出すスキームです。出資した法人は、初年度に出資額の90〜100%相当を損金として計上できます。
4000万円を出資した場合、最大3600万円が今期の損金になる計算です。実効税率がおよそ33%だとすると、単純計算で約1200万円の税負担が軽くなるわけです。利益を圧縮できるのは今期だけですが、キャッシュアウトを抑えながら節税できる点が、この手法の最大の魅力と言えます。
「節税できた!」で終わらないのがポイント
ただし、このスキームは「今期の節税」だけを見ていると、後で痛い目を見ます。
運用期間が終わると、船舶が売却されて売却益が発生します。その時点で一気に課税所得が膨らむ構造になっているんです。つまり、課税を「今」から「将来」に繰り延べているに過ぎない、という理解が正確です。
では意味がないのか?というと、そうではありません。将来の売却益が発生するタイミングに合わせて、退職金の支払いや別の節税スキームを組み合わせれば、トータルの税負担を大きく抑えることができます。大事なのは、出口まで設計しておくこと。それができるかどうかが、このスキームを上手に使えるかどうかの分かれ道です。
飛びつく前に知っておきたい3つのリスク
正直なところ、節税効果の大きさばかりが先行しがちなスキームでもあります。税理士として、必ず確認してほしいことが3点あります。
まず、運用期間が非常に長いという点です。8〜12年が一般的で、その間は資金が拘束されます。10年後の会社の状況まで見通したうえで判断しなければなりません。
次に、途中で抜け出すのが難しいこと。業績が悪化したり、急に資金が必要になっても、中途解約はほぼできないと思っておいてください。流動性が低い投資であることを、十分に理解しておく必要があります。
そして、為替リスクです。船舶リースは国際取引のため、運用収益や売却益の計算はドル建てになるケースがほとんどです。円高が進めば、手元に戻ってくる金額が目減りすることもあります。
「節税したい」だけで動くと失敗する
このスキームをご提案すると、効果の大きさに目が行って「すぐやりたい」とおっしゃる社長が多いです。その気持ちはよく分かります。ただ、節税効果の高さと、自社にとっての適切さは、別の話です。
手元のキャッシュに余裕があるか、10年後の事業計画はどうなっているか、出口のタイミングで退職金を使える設計になっているか。こうした点をひとつひとつ確認せずに出資してしまうと、「節税はできたけど、資金繰りが苦しくなった」という本末転倒な結果になりかねません。
船舶リースは、しっかり設計すれば確かに強力な節税ツールです。でも、それはあくまでも「出口戦略まで描けている場合」の話。興味を持ったら、まず信頼できる税理士に相談して、自社の財務状況と照らし合わせたうえで判断してください。
今期の利益が大きくなりそうな社長ほど、今すぐ動きたくなる気持ちはわかります。でも、焦って飛びつくより、落ち着いて専門家と一緒に設計する時間を取ることが、最終的に一番大きなリターンをもたらします。決算の3〜6ヶ月前には動き出せるよう、早めに税理士へ声をかけておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。