先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。決算期に保険を駆使して節税してきたのに、税務調査が入った途端、「この保険について説明してください」と真っ先に切り込まれた——と。
調査官は保険のことをよく研究しています。節税効果の高い商品ほど、当然ながらチェックされやすい。「昔から入っているから大丈夫」と高をくくっていると、思わぬ追徴課税に直面することになります。
今回は、税務調査で特に目をつけられやすい法人保険を3位から順にご紹介します。心当たりのある保険があれば、早めに専門家に確認することをおすすめします。
3位:逓増定期保険——「解約のタイミング」が命取りに
逓増定期保険は、保険金額が時間の経過とともに逓増し、一定期間後に解約返戻金がピークを迎える構造が特徴です。かつて「前半の保険料の一部損金算入」として多くの中小企業に普及しました。
問題になるのは、解約のタイミングです。返戻金がピークに達する前後で解約した場合、税務署は損金に算入した保険料の全額を「洗い直す」ことがあります。過去数年分の損金算入を否認されれば、追徴課税が数百万円規模になるケースも珍しくありません。
「節税になると聞いて加入した」という社長が、10年後に数百万円の請求書を受け取る——そういった事例が今も続いています。加入時に説明を受けた内容と、実際の税務上の取り扱いが異なっていたというケースも多く、購入した保険代理店への責任追及問題に発展することすらあります。
2位:養老保険(ハーフタックスプラン)——「全員加入」の壁
「ハーフタックスプラン」という名称を聞いたことがあるでしょうか。養老保険を活用した節税スキームで、保険料の半額を損金に算入できるというものです。福利厚生目的として設計されており、「全従業員が加入すること」が損金算入の条件になっています。
ここが落とし穴です。実際には「役員だけ加入」「特定の幹部社員だけ加入」という形で運用しているケースが多く、そのまま税務調査を受けると「福利厚生には当たらない」と判断されます。その結果、損金に算入していた保険料が全額「益金算入」として認定され、一気に課税対象になります。
「全員加入」の基準は思ったより厳格です。パートタイム労働者や試用期間中の従業員の扱いなど、細かい論点が多く、気づかないうちに要件を満たせていないケースがあります。過去に遡って追徴課税が発生するリスクがあるため、今すぐ加入要件を確認することをおすすめします。
1位:名義変更プラン——2021年の改正後も「過去契約」が狙われる
そして、最も調査官に目を光らせられているのが「名義変更プラン」です。
これは、法人が加入している保険の契約者を、解約返戻金が低い時期に個人(役員)へ移転するスキームです。移転時点の解約返戻金が低ければ、法人側の益金算入額を抑えつつ、個人側に契約を引き継げる。かつては合法的な節税手法として広く活用されていました。
しかし、2021年の通達改正でこのスキームは実質的に封じられました。改正後は名義変更時の評価方法が見直され、低額移転による節税効果はほぼ消滅しています。
さらに厄介なのが「過去契約への遡及調査」です。改正前に行った名義変更についても、税務署が再調査するケースが相次いでいます。追徴課税1000万円を超えた事例も報告されており、「昔にやったことだから問題ない」とは言い切れない状況です。名義変更プランに心当たりがある社長は、今すぐ顧問税理士に状況を確認してください。
保険は「加入時」だけでなく「出口」まで設計する
この3つのケースに共通するのは、「加入時は合法だったが、解約・移転のタイミングで問題になった」という点です。保険を使った節税は、加入時の損金算入効果だけを見て判断してはいけません。解約時の返戻金をどう処理するか、名義をどう扱うか——出口まで含めた税務設計が不可欠です。
保険代理店は「節税になる」と説明してくれますが、税務上のリスクまで詳しく教えてくれるとは限りません。保険の見直しや新規加入を検討しているなら、必ず税理士を交えて判断することをおすすめします。
今の保険契約に不安を感じているなら、今期中に一度、顧問税理士と「出口戦略」を確認しておきましょう。保険は加入して終わりではなく、解約や移転の場面まで含めて初めて「節税」が完成するものです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。