先日、年商10億円を超える不動産会社の社長から、こんな連絡が届きました。「今期の利益が5,000万円を超えそうで、何か手を打ちたいんだけど…」というものです。
決算3ヶ月前。焦りと期待が混じった声でした。
こういうとき、多くの経営者がまず思い浮かべるのは「経費を積む」か「保険に入る」のどちらかでしょう。ところが、それでは追いつかないレベルの利益が出た年に本当に使える手というのは、実は限られています。
そのひとつが「オペレーティングリース」、業界では「OL(オー・エル)」とも呼ばれる仕組みです。
航空機と船舶が、節税の器になる
オペレーティングリースとは、複数の法人が共同で航空機や船舶などの高額資産を購入し、それを航空会社や海運会社にリースする投資スキームです。
資産購入時に発生する減価償却費が「損金」として計上されるため、初年度から巨額の損失を帳簿に乗せることができます。
1億円を出資した場合、損金算入率はおよそ70%。つまり7,000万円が損金になります。法人実効税率34%で換算すると、約2,380万円の節税効果が生まれる計算です。
保険や中小企業経営強化税制と比べても、そのインパクトは桁違いです。
「節税」ではなく「繰り延べ」と理解する
ここだけは絶対に誤解してほしくないことがあります。
オペレーティングリースは、税金をゼロにするわけではありません。正確には「課税の繰り延べ」です。
リース契約の前半では大きな損失が出ますが、後半になると今度は収益が発生してきます。最初にガツンと損金を計上した分、後年に課税される所得が増えるしくみになっています。
スキームに組み込むだけで満足してしまうのは危険です。出口でどう課税が発生するか、そのタイミングで会社がどういう状態にあるかを見越して設計しないと、かえってキャッシュを圧迫することになります。
こういう会社に向いている
オペレーティングリースが有効に機能するのは、大まかに言えばこういう状況の会社です。
- 今期の利益が3,000万円を超えている
- 出資できる手元資金(または借入余力)が1億円以上ある
- 数年後に会社を売却・承継する計画がある
- 役員退職金のタイミングで出口を合わせられる
条件が揃った会社には、非常に強力な選択肢になります。一方、利益が薄い年や、資金繰りが厳しい状況で無理に組むと、節税どころか経営の首を絞めるだけです。向き不向きをきちんと見極めることが最初の一歩です。
「税理士が教えてくれない」本当の理由
「税理士が教えない」と書きましたが、正確には「提案しない税理士が多い」ということです。
オペレーティングリースは通常の申告業務の範囲外であり、専門的な知識が求められます。また出資額が大きいため、顧問先に勧めるには信頼関係と確かな理解が前提になります。
だからこそ、社長側から「こういうスキームに興味がある」と声をあげることが大切です。積極的に相談してくれるクライアントには、税理士も自然と深い提案をするようになります。
今期の利益が見えてきたら、早めに動く
オペレーティングリースは、決算期の3〜4ヶ月前から動き始めるのが理想です。スキームの組成には時間がかかりますし、優良な案件ほど早く埋まります。
「来期でいいか」と先送りにすると、使えるタイミングを逃してしまいます。今期の着地が見えてきたタイミングで、まず顧問税理士にオペレーティングリースの話を振ってみてください。
知識のある税理士なら、すぐに話が通じるはずです。もし「それは難しいですね」で会話が終わるようであれば、この分野に精通した専門家への相談を検討するタイミングかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。