先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「決算まであと2ヶ月なんですが、今期の利益が想定より3億円ほど多くなってしまって…。今から何か手はありませんか?」
年商15億の不動産業を営む社長です。ここ数年で業績が急拡大し、それ自体は喜ばしいことなのですが、法人税の負担がじわじわと重くなってきていた。
「今から動けば、選択肢はまだあります」とお伝えしたとき、私が最初に挙げたのが航空機オペレーティングリースです。名前を聞いたことがある方も多いと思いますが、「なんとなく知っている」という社長が大半で、実際に活用しているケースはまだ少ない。今回はこのスキームを、具体的な手順とともに整理しておきたいと思います。
億単位の利益を抱えた社長が見落とすもの
年商が10億、20億を超えてくると、節税の手段は「いかに経費を積むか」という話になりがちです。社用車を購入する、設備投資を前倒しにする、役員報酬を調整する——こうした施策は確かに効果があります。
ただし、年間の課税利益が2〜3億円を超えてくると、それだけでは対応しきれない局面が出てきます。経費で落とせるものには、どうしても限りがあるからです。
そういう段階になってはじめて「もっと大きな仕組みが必要だ」と気づく社長が多いのですが、気づくタイミングが遅すぎるケースも少なくありません。これが、大型節税の機会を逃す社長に共通するパターンです。
仕組みをざっくり理解する
航空機オペレーティングリースは、航空会社が使う機体を、複数の出資者が匿名組合を通じてリースする仕組みです。
社長の会社は匿名組合の出資者として参加します。すると初年度に、出資額の50〜60%程度を損金として計上できます。たとえば1億円を出資すれば、5,000〜6,000万円が損金になる計算です。
リース期間は通常8〜12年で、出口では航空会社への売却益として資金が戻ってきます。なぜこれほど損金が大きいかというと、航空機は減価償却が急速に進む資産だからです。リース開始直後の数年間で資産価値の大部分が償却されるため、初期の節税効果が非常に大きくなります。
複数年にわたって積み上げた場合、5億円規模の損金を生んでいる社長もいます。実効税率35%で換算すれば、約1.75億円の税負担が軽くなる計算です。
失敗する社長の共通点はタイミング
このスキームで何より重要なのは「いつ動き始めるか」です。
航空機リースの組成には、一定の準備期間が必要です。匿名組合の設立、航空会社との契約、資産の移転——これらを整えるには、決算の3〜6ヶ月前には動き出していないと間に合いません。
期末1ヶ月前に「利益が出すぎた」と焦って問い合わせてきても、その年の利益は丸ごと課税対象になってしまいます。実際にそういう社長を何人も見てきました。「知ってはいたけれど、うちには関係ないと思っていた」という言葉が、毎年誰かの口から出てきます。
「今期の着地が見えてきた」というタイミング、つまり決算の半年前には税理士と話し始めるのが鉄則です。
実際に動くときの手順
活用するときの大まかな流れはこうです。
まず、専門の税理士や金融機関に相談して、自社の利益規模と出資可能額を確認します。案件によって最低出資額が1,000万〜1億円程度と幅があるため、選択肢を絞り込む必要があります。
次に、匿名組合契約書をしっかり確認します。出資条件、リース期間、出口の条件、リスクの所在——ここを読み飛ばすと後悔します。契約書の内容を理解した上で、出資金を払い込み、決算期に損金を計上する。これが基本の流れです。
ひとつ強調しておきたいのは、このスキームはあくまで「課税の繰り延べ」だという点です。リース終了時(出口)には売却益として益金が戻ってくるため、その時点での税負担も想定した上で設計しなければなりません。「節税できる」という言葉だけに引き寄せられて、出口を考えずに飛び込むのは危険です。
今期の利益が見えてきたなら
年商が一定規模を超えた社長にとって、航空機リースは有効な選択肢のひとつです。ただし、適切に設計しないと後年に税負担が集中することもある。出口まで含めたシミュレーションを専門家と一緒に確認してから動くことが、成功している社長に共通しているポイントです。
今期の利益の着地が見え始めたら、まず顧問税理士に「航空機リースの検討余地があるか」と一言聞いてみてください。それだけで、選択肢の幅がぐっと広がります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。