「社長、今期の利益が1億を超えそうなんですが、何かいい手はありますか?」

先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。決算まであと2ヶ月。利益がしっかり出ているのはいいことですが、このままでは法人税が数千万円規模になってしまいます。

そこで話題に上がったのが、オペレーティングリース(航空機リース)を活用した節税スキームです。うまく活用すれば、1億円をその年の経費として落とすことができます。ただし、誰でも使えるわけではありません。

「聞いたことはある」という社長は多いのに、実際に活用できている人が限られているのは、使える条件が意外と絞られているからです。今回はその3つの条件を、現場目線でお伝えします。

そもそもどういう仕組みなのか

航空機や船舶などの高額資産を、複数の出資者(匿名組合)が共同で購入し、航空会社などにリースするスキームです。リース料を受け取る一方で、初年度に減価償却費などが出資者に帰属するため、投資した年に大きな損金が発生します。

たとえば1億円を出資すると、その年のうちに8,000万〜1億円程度が損金になるケースも珍しくありません。法人税の実効税率を30%で計算すると、2,400〜3,000万円の節税効果になります。中小企業オーナーが使える節税手法の中では、規模感の大きさが際立っています。

条件1:法人として参加していること

まず大前提として、個人名義では参加できません。主流の匿名組合型スキームは、法人格を持つ出資者を対象としているケースがほとんどです。

「個人でもお金はあるんだけど」という方が時々いるのですが、このスキームのメリットを最大限に引き出すには、法人を通じて出資する必要があります。まだ法人化していない場合は、まずそちらから検討することになります。

個人と法人では税率の構造が根本的に違います。個人の総合課税では最高55%まで上がりますが、法人税の実効税率は概ね25〜35%程度。損金の価値も含め、法人で動かす優位性は圧倒的です。法人化のハードルを低く見ていた経営者ほど、この話を聞いて「もっと早くやっておけばよかった」とおっしゃることが多いです。

条件2:同じ年に1億円超の課税所得があること

これは非常に重要なポイントです。損金というのは、利益と相殺して初めて意味を持ちます

赤字の年に1億円の損金を作っても、法人税は元々ゼロです。繰越欠損金として翌期以降に持ち越すことは制度上できますが、将来の利益と相殺するためには別途計画が必要になります。節税のために仕組みを作ったのに、機能しなかったというケースがここから生まれます。

このスキームが最もパワーを発揮するのは「今期の利益が突出して高い年」です。M&Aで譲渡益が発生した年、不動産を売却した年、業績が大きく跳ね上がった年——こういうタイミングに合わせて活用するのが鉄則です。

毎年コンスタントに使い続けるものではなく、「ここ一番」の年に集中投入するイメージを持っておくといいでしょう。

条件3:出口設計を最初に決めておくこと

ここを飛ばしてしまう社長が、実はいちばん多いんです。

オペレーティングリースは、投資した年に大きな損金が発生しますが、リース期間(通常5〜7年)が終了すると航空機を売却します。そのときの売却益は益金(課税所得)として戻ってきます

つまり「今期は節税できたが、5〜7年後に課税の山が来る」というのがこのスキームの本質的な構造です。将来の課税にどう備えるか——事業が順調に拡大して吸収できる体質になるのか、代表者交代のタイミングと合わせるのか——出口設計を最初から織り込んでいないと、後で困ることになります。

期待利回りは一般的に3〜5%程度とされていますが、リース先の航空会社の信用力や為替リスクも影響します。「節税になるから」という理由だけで飛びつくのではなく、あくまで「節税効果込みの投資」として数字を検証することが大切です。

3つの条件を整理すると

この仕組みを活用できる人を一言でまとめると、「今期1億円超の利益がある法人オーナーで、5〜7年後の出口まで見通せる人」ということになります。

  • 法人格がある:個人事業主では原則対象外
  • 今期の課税所得が1億超:損金を相殺できる利益があること
  • 出口設計が決まっている:将来の益金課税に備えた計画があること

この3つが揃っている場合、税務の専門家なら真っ先に検討を勧めるスキームです。逆に1つでも欠けていると、効果が半減以下になる可能性があります。

動き出すタイミングが重要です

オペレーティングリースは、申し込みから実行まで数週間〜1ヶ月程度かかります。決算ギリギリに動いても間に合わないケースがあるので、「今期は利益が大きそう」と感じたら、3〜4ヶ月前には検討を始めてください。

またスキームを組んでいる会社や金融機関によって条件が異なります。信頼できる専門家を通じて複数の案件を比較検討することをおすすめします。

今期の決算見込みを税理士に相談するついでに「航空機リースの話を聞かせてほしい」と一言添えてみてください。その一言が、数千万円の節税機会につながるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。