先日、年商10億円規模の建設会社の社長から、こんな相談を受けました。

「同じ業界の友人が法人保険を解約したら、うちより何百万も多く戻ってきたらしくて。同じくらいの保険料を払ってたのに、なんで差が出るんですか?」

答えはシンプルです。商品の選び方が違ったのです。法人保険は、どの商品を選ぶかによって、解約時に手元に戻ってくる金額が大きく変わります。年間保険料が1億円規模になると、その差は2,000万円を超えることもあります。

「返戻率」が保険選びの核心

法人保険を比較するうえで必ず出てくるのが「解約返戻率」という概念です。これは、支払った保険料の合計に対して、解約時に戻ってくる金額の割合を指します。

たとえば返戻率75%の商品なら、1億円払い込んで解約時に7,500万円。返戻率90%なら9,000万円。この差は、企業の財務に直接響きます。にもかかわらず、「節税になるから」と深く考えずに加入している社長が少なくありません。

代表的な3商品を、返戻率の低い順に見ていきましょう。

第3位:長期平準定期保険(返戻率75%前後)

法人保険の中でもっともオーソドックスな選択肢です。商品ラインナップが豊富で、多くの生命保険会社が取り扱っており、税理士への相談もしやすい。「とりあえず法人保険」と言えば、まずここに行き着く商品です。

返戻率は75%前後が目安で、1億円払い込んだ場合、解約時に戻るのはおよそ7,500万円。節税効果と保障のバランスが取れており、仕組みのわかりやすさが最大の強みです。

一方で、資産としての積み上がりという点では、次の2商品に劣ります。「シンプルに使いたい」「保障を優先したい」という方向けの選択肢です。

第2位:低解約返戻型終身保険(返戻率85%超)

ここ数年で、節税意識の高い社長たちの間で急速に注目が高まっている商品です。返戻率は85%を超えることが多く、1億円払い込んで解約時に8,500万円以上が戻ってくる計算になります。第3位との差はおよそ1,000万円。

資産性と節税の両立が可能という点が、この商品の最大の売り文句です。長期保有するほど返戻率が上がっていく設計になっているため、出口戦略を描きやすいのも特徴です。

ただし、名前にある「低解約返戻」というのが曲者です。保険料の払い込み期間中に解約すると、返戻率が極端に低くなるケースがあります。「やっぱり途中でやめたい」となると大きな損失になるため、資金繰りの見通しをしっかり立てた上で検討することが前提になります。

第1位:外資系逓増定期保険(返戻率90%超)

現時点での最高水準は、一部の外資系逓増定期保険です。商品によっては返戻率が90%を超え、1億円の払い込みに対して解約時に9,500万円超が戻るケースもあります。第3位との差を計算すると、実に2,000万円以上。

同じ保険料を払い続けながら、解約時にこれだけの差が出るとなれば、商品選びの重要性は明らかです。

ただし、ここで一点、絶対に外せない注意事項があります。

税制改正により、法人保険の損金算入ルールは大きく変わっています。以前は保険料の全額あるいは大半を損金に算入できた商品でも、現在は返戻率に応じて損金に算入できる割合が制限されています。つまり「返戻率が高い=節税効果が大きい」とは必ずしも言えなくなっているのです。

この商品を検討する場合は、損金算入率も含めた総合的な試算を、必ず専門家に依頼してください。

商品を選ぶ前に確認すべき3つのこと

返戻率の数字だけを見て飛びついてしまうのが、法人保険選びで最もよくある失敗です。実際に検討する際には、以下の3点を必ず確認しましょう。

  • 損金算入率: 保険料のうち何割を損金に算入できるか。返戻率が高くても損金算入率が低ければ、節税効果は期待より小さくなります
  • 解約のタイミング: 返戻率のピークはいつか。そのタイミングで利益を圧縮できる状況を作れるか、出口を先に設計することが重要です
  • キャッシュフローへの影響: 毎期の保険料が資金繰りを圧迫しないか。経営の自由度を損なわないことが大前提です

今の保険、一度見直してみませんか

法人保険はうまく活用すれば、節税と資産形成を同時に進められる有力なツールです。しかし、商品の特性を正しく理解せずに加入すると、解約時に「こんなはずじゃなかった」という事態になりかねません。

今どの保険に入っているか、返戻率はどのくらいか、すぐに答えられない社長は要注意です。一度、担当の税理士や保険の専門家と一緒に試算してみることをおすすめします。2,000万円の差は、そのひと手間で十分に取り戻せる金額です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。