先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。「保険を解約したんですが、税理士から今期の税金がかなり増えると言われて……」。

決算書を確認してみると、解約返戻金は約5,000万円。しかし返戻率のピークからすでに3年が経過していました。本来なら7,000万円以上受け取れたはずの保険が、大幅に目減りしていた。そのうえ解約返戻金の全額が益金として計上され、法人税がズシッと直撃することになったのです。

返戻率のピークを過ぎると何が起きるか

貯蓄性の高い法人保険には「返戻率推移」があります。契約から一定年数が経つと、返戻率はどんどん下がっていく仕組みです。

返戻率が100%を超えるピーク期間は、多くの保険でせいぜい2〜3年程度。その窓を逃すと、毎年2〜5%ずつ返戻率が落ちていきます。ピークから3年経過すると、返戻率が20%以上下落するケースも珍しくありません。

5,000万円の解約返戻金が、本来7,000万円になっていたはずなら差額だけで2,000万円のロス。さらに解約返戻金の全額が益金算入されるので、法人税の負担も重くのしかかります。これが「知らない社長」の典型的なパターンです。

知っている社長はどう動くか

「知っている社長」の解約戦略は、シンプルですが効果絶大です。

返戻率がピークに差し掛かるタイミングで解約する。そして同じ期に役員退職金を支給する。この組み合わせだけです。

役員退職金は、適切な金額であれば損金算入できます。解約益で膨らんだ益金を、退職金の損金で相殺する。税務上の利益をぐっと圧縮できます。

たとえば解約返戻金が7,000万円あるとして、同期に3,000万円の退職金を支給すれば、実質的な益金は4,000万円まで下がります。法人税率30%で計算すると、退職金なしなら税負担は2,100万円。退職金ありなら900万円に圧縮できる。この差が1,200万円。返戻率の下落による損失も合わせると、「知っている」「知らない」の差は最大3,000万円規模に達します。

保険は「入るとき」より「出るとき」で決まる

法人保険を契約するとき、多くの社長は「保険料が損金になる」という節税効果に注目します。でも本当に重要なのは、出口戦略です。

契約した瞬間から「いつ、どのように解約するか」を設計しておく必要があります。そのための道具が「解約返戻率推移表」です。保険会社から必ず受け取れる書類ですが、引き出しに眠らせている社長が多い。

毎年この表を確認して、返戻率のピークがいつかを把握しておくだけで、タイミングを逃すリスクを大幅に減らせます。また退職金との組み合わせには、退職金の「適正額」の試算や支給時期の調整が必要なので、早めに税理士と相談しながら設計することをおすすめします。

今すぐ確認してほしいこと

もし今、法人保険に加入しているなら、まず保険会社から「解約返戻率推移表」を取り寄せてください。ピークがいつか、現在の返戻率はどこにあるか、それだけでも把握しておくことが大切です。

ピークが3年以内に来るなら、今から退職金の設計を始めても早すぎません。むしろ準備期間があるほど、税務上の選択肢が広がります。

担当の税理士に「うちの保険、返戻率のピークはいつですか?」と一言聞いてみてください。その確認が、数千万円の差を生むかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。