先日、年商9億の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。
「決算3ヶ月前なのに、利益が予想より2,000万円も膨らんでしまって。今から何かできることはあるかな」
こういった場面で真っ先に名前が上がるのが、法人保険です。ただ「法人保険で節税」という話は知っていても、どの保険がどれだけ効果的なのかまで把握している経営者は意外と少ない。今回は、年商10億クラスの社長が実際に活用している法人保険を、節税効果が大きい順にご紹介します。
3位:全額損金型定期保険
まず3位は、仕組みのシンプルさが魅力の保険です。
保険料の全額を損金に算入できるため、実効税率34%の法人であれば、保険料100万円を払うごとに約34万円がそのまま税負担の圧縮につながります。計算がわかりやすいぶん、経営者本人も効果を実感しやすく、決算前に利益を圧縮したいケースでよく使われます。
ただし、大きな注意点があります。解約返戻金はほぼゼロです。純粋に死亡保障を買いながらその保険料を損金計上する仕組みなので、途中で解約してもお金は戻ってきません。毎年の節税には有効ですが、「将来のキャッシュも回収したい」という目的には向かない保険です。
利益圧縮という一点に絞れば費用対効果は高い。ただし節税と資産形成を同時に狙うなら、次の保険が候補になります。
2位:長期平準定期保険
節税しながら資産を積み上げるバランス型として、年商5〜10億クラスの社長に人気があります。
毎年の保険料のうち一定割合を損金として計上しつつ、解約返戻率が最大85%前後まで上がる時期が訪れます。支払った保険料の大半が将来戻ってくる設計なので、税負担を下げながら会社にキャッシュを蓄積できるわけです。
注意したいのは、解約タイミングです。返戻率のピーク時期を逃すと、手元に戻る金額が減ってしまいます。また、解約時に受け取った資金は益金として計上されるため、そのタイミングに合わせて別の損金(たとえば役員退職金)を用意できるかどうかが、設計の鍵を握ります。
「今すぐ節税したいが、将来のキャッシュも確保しておきたい」という経営者には、検討する価値があります。
1位:逓増定期保険×役員退職金スキーム
節税額という観点で、現状もっとも大きな金額を動かせるのがこのスキームです。
保険料を損金計上しながら積み立て、解約返戻金のピーク時に役員退職金として受け取ります。役員退職金には退職所得控除が適用されるため、個人の税負担も大幅に圧縮できます。法人側の損金計上と個人側の退職所得控除、この二段構えで設計すると、スキーム全体で1億円を超える節税効果になるケースも珍しくありません。
ただし、これは「設計が命」の保険です。加入時期・保険期間・退職金の支給タイミング・金額設定など、複数の要素がすべて噛み合って初めて最大効果が出ます。設計を誤ると、税務否認リスクや過大退職金の問題につながることもあります。数年後に事業承継や引退を見据えている社長が、顧問税理士と一緒に腰を据えて設計するのが前提です。
結局、どれを選べばいいのか
3つを比較したとき、どれが合うかは会社の状況によって変わります。
今期の利益圧縮だけが目的なら全額損金型、節税と将来のキャッシュ確保を両立したいなら長期平準定期、大型節税と事業承継・引退まで見据えるなら逓増定期×退職金スキームが候補になります。
重要なのは、保険に加入する前に「いつ・どれくらいのキャッシュが必要か」を明確にしておくことです。一度入ると簡単には変更できないのが保険の特性で、設計の前提が崩れると効果が半減します。
年商5億を超えたあたりから、法人保険の節税効果は無視できない規模になってきます。今期の決算見通しが固まる前に、一度顧問税理士と一緒に試算してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。