先日、ある社長からこんな相談を受けました。「毎年2億円の法人保険に入って節税しているんだけど、最近なんか効果が薄くなった気がする」と。

話を聞いてみると、保険に入ったのは2018年ごろ。担当の保険営業から「全額損金になって節税できます」と説明を受けて契約し、それからずっと同じ保険を続けているとのことでした。

結論から言うと、その社長は「改正前のルール」のまま損益計算をしていた可能性が高いです。

2019年6月、損金のルールが一変した

2019年6月、国税庁は法人が加入する定期保険・第三分野保険について、経理処理の新しい取扱いを通達しました。

それまでは、いわゆる「全額損金」商品と呼ばれる法人保険が存在しており、保険料の全額を損金算入できるケースがありました。これが事実上の節税手段として、多くの中小企業オーナーに活用されていたのです。

しかし改正後は、最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が段階的に制限されました。最高解約返戻率が50%以下であれば全額損金算入が可能ですが、70%を超えると損金算入できるのは保険料の40%のみ。85%を超えると保険料の大半が資産計上になり、損金になるのはほんの一部に限られます。

「2億の保険料=2億の損金」は幻想

具体的な数字で見てみましょう。

年間保険料が2億円で、最高解約返戻率が90%の保険に加入しているとします。改正後のルールでは、保険期間の一定期間は保険料の約60%(約1億2,000万円)が損金算入、残りの約40%(8,000万円)は資産計上になります。

法人税率を約30%とすると、2億円の保険料を払って得られる実際の節税効果は約3,600万円です。「2億円全額が損金になる=6,000万円の節税」と思い込んでいた場合、節税効果は想定の6割しかない計算になります。毎年2億円の保険料を払い続けているとすれば、その差は無視できません。

解約時にも税金が待っている

資産計上した分は、将来解約したときに返戻金として戻ってきます。この返戻金は法人の益金として計上されるため、そのまま課税対象になります。

たとえば10年後に保険を解約して5億円の返戻金を受け取ったとすれば、その額に対して法人税がかかります。「節税のつもりが、税金の先送りだった」という結果になりかねません。

この問題に対応する手段が「退職金との組み合わせ」です。保険の解約時期に合わせて役員退職金を支払うことで、益金と損金を相殺できます。ただし、これが機能するには精緻な設計が必要です。保険の解約返戻金がピークになる時期と、社長が引退するタイミングが合っていること。退職金の額も役員報酬や在任年数に基づいて適切に算定しなければ、税務署から否認されるリスクもあります。

今すぐ確認してほしい4つのポイント

法人保険を見直す際に、まず押さえておきたいことがあります。

  • 現在の保険の最高解約返戻率はいくつか
  • 損金算入割合資産計上割合はそれぞれどれくらいか
  • 解約返戻金のピーク時期と金額はいつ・いくらか
  • 解約時に退職金との相殺計画が立てられているか

この4点が把握できていなければ、節税効果を正確に計算することはできません。保険会社から受け取った「設計書」に、これらの情報が記載されています。まだ確認していないなら、一度引っ張り出してみてください。

法人保険は設計と出口で決まる

誤解してほしくないのですが、法人保険そのものが悪いわけではありません。万が一の保障として機能しますし、設計次第では節税効果も十分あります。問題なのは、2019年以前の感覚が抜けないまま何となく続けている状態です。

設計書を持って、法人保険に詳しい税理士に相談してみてください。「本当に節税になっているのか」「将来の税負担はどう見込むべきか」を試算してもらうだけで、次の手が見えてきます。

2億円の保険料を毎年払い続けるなら、その効果を正確に把握してからでも遅くありません。今の契約を一度見直してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。