先日、年商12億円の製造業を経営する社長から、こんな連絡がありました。

「今期、利益が3億円出そうなんですが、手を打てますか?」

決算まで残り2ヶ月。顧問税理士に相談したところ、返ってきたのが「オペレーティングリース」という言葉でした。聞き慣れない響きかもしれませんが、年商10億円規模の法人にとって、これほど強力な節税の選択肢はなかなかありません。

航空機を「経費」にするという発想

オペレーティングリースとは、一言でいえば、航空機や船舶などの大型資産を複数の法人で共同出資し、その減価償却による損失を自社の経費として計上できる仕組みです。

イメージとしては、複数の社長が共同で飛行機を買い、それを航空会社に貸し出す——そんな絵を思い浮かべてもらうと近いです。リース期間中(通常5〜7年)は、資産の減価償却費が毎年大きく計上されます。その損失があなたの会社の「損金」として認められるため、課税所得を大幅に圧縮できるわけです。

3億円の出資で何が起きるか

具体的な数字で見てみましょう。

3億円分のオペレーティングリースに出資した場合、その損金算入額を5年間にわたって計上していきます。法人実効税率を34%と仮定すると、約1億円分の税負担を後ろにずらすことができます。

ただし、ここで正確に理解しておきたいのは、これは「節税」ではなく**「課税の繰り延べ」**だということです。リース期間が終わり、資産を売却するタイミング(出口)では、繰り延べた分が益として戻ってきます。税金が消えるわけではなく、時間軸をずらす仕組みなのです。

繰り延べを「得」にするための条件

では、なぜ繰り延べが「得」になるのか。それは今と将来で税率が変わることを利用するからです。

今期だけ突出して利益が出ているなら、今の高い実効税率で経費に落とし、5〜7年後の出口では規模縮小や引退後の低い税率で益を受け取る——この時間差が実質的な節税効果を生み出します。

特に相性がいいのは、次のようなケースです。

  • M&Aを前後に控えている会社: 売却前後で利益が集中しやすく、出口設計と組み合わせやすい
  • 大型受注や不動産売却で単年の利益が跳ねた会社: 突発的な利益を数年に分散させられる
  • 5〜10年後に引退・事業縮小を考えている社長: 将来の低税率期に益を受け取る設計ができる

逆にいえば、出口のタイミングも同じくらい高い税率が続く見通しなら、繰り延べによる実質メリットは薄くなります。自社の将来像と照らし合わせて判断することが欠かせません。

参入条件と動くべきタイミング

オペレーティングリースは、一般的に1口3,000万円〜1億円程度の出資が最低単位です。年商10億円以上の法人でないとなかなか参入できないのは、このためです。

また、案件の枠(口数)には限りがあります。人気の航空機案件などは早々に埋まることが多く、「決算直前に動こう」では間に合わないケースも珍しくありません。

案件情報は、税理士や証券会社など専門家のルートから入手するのが一般的です。信頼できる税理士と日頃からコミュニケーションを取り、「今期の利益が見えてきたら早めに動く」という習慣が重要になります。

知っておくべきリスクと注意点

オペレーティングリースにはメリットばかりではありません。

まず、途中解約が基本的にできない点です。一度出資したら、リース期間が終わるまで資金は拘束されます。手元のキャッシュフローを圧迫しないか、事前に確認が必要です。

次に、為替リスクがあります。航空機リースの多くはドル建てのため、円高局面では出口での益が目減りする可能性があります。

そして最も重要なのが、出口設計の精度です。繰り延べた益がどのタイミングで戻るかを見越し、そのときの会社の状況を想定した上で判断する必要があります。この設計を誤ると、「繰り延べたけど結局同じ税率で払っただけだった」ということになりかねません。


年商10億円を超えてきたら、一度は顧問税理士に「うちはオペレーティングリースを使えますか?」と聞いてみてください。その一言が、数千万円単位の差を生むことがあります。決算期を待たず、利益が見えてきた段階で早めに動くのがポイントです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。