先日、ある社長からこんな相談を受けました。「顧問税理士には『もうできることは限られてますね』と言われたんですが、本当にそうなんでしょうか?」

年商が10億円を超えてきたタイミングで、決算書の「法人税等」の欄を見て愕然とする経営者は少なくありません。国内法人の実効税率は約34%。単純計算で、利益の3分の1以上が毎年税金として消えていきます。年商10億・利益1億なら、3,400万円ほどを国に納めることになる計算です。

でも、同じような規模のオーナー社長の中に、実効税率を10%台にまで下げている方がいます。脱税でも怪しいスキームでもなく、合法的に、です。その仕組みを今日は正直にお伝えしようと思います。

低税率を実現している社長が使っている「組み合わせ」

鍵は、海外法人と国内法人を組み合わせた「グループ全体の税構造の最適化」にあります。

シンガポールの法人税の最高税率は17%、香港は16.5%です。ただし、一定の要件を満たす企業には実質10%前後の税負担で済む優遇制度が用意されています。日本の34%と比べると、その差は歴然です。

具体的には、グループ全体の機能を見直して、知的財産の管理・運用、海外向けの営業やマーケティング機能、グループ内の資金調達機能といった業務を、シンガポールや香港の法人に担わせます。そこで生まれた利益は現地の低税率で課税されるため、グループ全体の実効税負担が大きく下がる、という仕組みです。

「名前だけの海外法人」は絶対に通用しない

ここで多くの社長が引っかかるのが、「じゃあシンガポールに会社を作って、そこに利益を移せばいいんだ」という誤解です。

残念ながら、それは通用しません。日本には「タックスヘイブン対策税制(CFC税制)」という制度があります。簡単に言うと、「実体のない海外法人に利益を移しても、日本の親会社の所得として課税しますよ」というルールです。

つまり、形だけシンガポールに子会社を作って利益を移しても、結局は日本の税率で課税されてしまう。「名義だけの節税」が意味をなさない理由がここにあります。

CFC税制を適法に回避するためには、現地に本当の事業機能があることが絶対条件です。現地スタッフの採用、現地での意思決定の実態、実際に機能している業務プロセス。これらを丁寧に構築して初めて、低税率の恩恵を受けられます。「実体」の設計が、このスキームの生命線です。

規模が大きくなると「文書化義務」も生まれる

グループ売上が一定規模を超えると、もう一つ注意すべきルールが出てきます。移転価格税制の文書化義務です。

グループ内の取引、たとえば日本法人からシンガポール法人への業務委託料やロイヤルティの支払いが、市場の公正価格と乖離していると税務当局に判断されると、その部分が税務否認されるリスクがあります。それを防ぐために、グループ内取引が一定規模を超える企業には、価格設定の根拠を文書化して保管することが義務づけられています。

文書化が不十分なまま税務調査を受けると、追徴課税に加えてペナルティも課される可能性があります。「後で整備しよう」では間に合わない話なので、構造を設計する段階から文書化を視野に入れておくことが重要です。

「設計の精度」が結果のすべてを決める

国内の節税対策と決定的に異なるのは、最初の設計が甘いと後から修正するのが非常に難しいという点です。

国内の経費対策なら、申告後に気づいて修正申告で対応できる部分もあります。でも海外法人を絡めた税構造は、一度組み上げると組み替えに時間もコストもかかる。否認されれば追徴税額が数千万円規模になることも珍しくありません。

だからこそ、この領域に強い国際税務の専門家と組むことが、コストではなく「投資」になります。実効税率が34%から15%に下がれば、その差額は利益1億円に対して年間1,900万円です。専門家報酬は、十分すぎるほど回収できる計算です。


年商が5億円を超えてきたあたりから、海外法人の活用を本格的に検討し始めるオーナー社長が増えています。「まだうちには早い」と思っているなら、今期の決算が終わったタイミングで、国際税務に精通した専門家に一度相談してみてください。動き始めるのが早いほど、選択肢が広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。