先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。「税務調査が入って、もう3ヶ月経つのにまだ終わらない。最初の1ヶ月でこんなに長引くと思わなかった」と。
話を聞いていくと、調査官の前でうっかり口にしてしまった一言が、調査を長引かせるきっかけになっていたんです。税務調査は言葉のやり取りが重要で、何気ない一言が調査の方向性を大きく変えることがあります。
今回は、税務調査の現場で絶対に言ってはいけないNGワードを5つ紹介します。知っているか知らないかで、追徴課税の金額が文字通り2倍以上変わることもあります。
第5位:「税理士に任せています」
一見、何が悪いのか分からないかもしれません。でも調査官の耳には「この社長は会社の実態を把握していない」と聞こえます。
社長が帳簿の中身を理解していないと判断されると、「では過去に遡って全部確認しましょう」となりやすいのです。実際、この一言をきっかけに過去5年分の帳簿を全件精査されたケースを何件も見てきました。
税理士に任せること自体は問題ありません。ただ、調査の場では「顧問税理士と一緒に対応している」というスタンスを見せることが大切です。
第4位:「全部経費です」
「うちの会社の支出はすべて事業に関係しています」という意味で言うのだと思いますが、これは逆効果です。
根拠を示さずに「全部経費」と主張すると、立証責任がすべて社長側に移ります。一つひとつの支出について「なぜ経費なのか」を説明しなければならなくなり、準備がないまま答えようとすると、認められるはずだったものまで否認されるリスクがあります。
経費の主張は「この支出は○○という業務のために使いました」と具体的な理由とセットで話すのが鉄則です。
第3位:「ずっとこのやり方でやってきた」
長年続けてきた処理方法を正当化しようとして、つい言ってしまいがちな一言です。ところが調査官には「過去も同じ処理をしていた」という自白に聞こえます。
税務調査の通常の遡及期間は3年ですが、悪質と判断された場合は最長7年まで遡ることができます。「ずっとこのやり方」という言葉は、7年前まで調査を広げる根拠を自ら提供してしまうことになるのです。
過去の処理が正しかったかどうかは、税理士と確認してから答えるべきです。その場での安易な発言は避けてください。
第2位:その場で「ちょっと確認してから」と電話する
調査官から質問されて、すぐに答えられないとき、その場で取引先や担当者に電話して確認しようとする社長がいます。気持ちはわかるのですが、これは絶対にやってはいけません。
調査官の目には「口裏を合わせようとしている」と映ります。そして即日、取引先への反面調査が始まります。反面調査とは、税務署が直接取引先に連絡を取り、帳簿や取引内容を確認する調査のことです。取引先との関係に影響が出るだけでなく、調査の範囲が一気に広がります。
「確認が必要な場合は後日回答します」と一言伝えて、税理士を通じて対応するのが正しい手順です。
第1位:「これは節税なので問題ないはず」
これが最も危険な一言です。節税策として取り入れた処理について、調査官から指摘を受けたときに思わず口から出てしまうことがあります。
ところが「節税なので」という言葉は、課税リスクを認識した上で行ったという証拠になります。税務の世界では、リスクを知りながら行った行為は「仮装・隠蔽」とみなされやすく、重加算税35%が上乗せされます。
通常の過少申告加算税が10〜15%であることを考えると、重加算税が適用されると追徴課税の総額が文字通り2倍以上に膨らみます。「節税のつもりだった」と言いたい気持ちはわかりますが、調査の場では絶対に口にしてはいけない言葉です。
事前準備が最大の防御
5つのNGワードに共通しているのは、「準備不足のまま調査に臨んでいる」という点です。調査官は年間何十件もの調査を経験したプロです。言葉のやり取りから企業の実態を読み取る訓練を積んでいます。
税務調査の通知が来たら、まず顧問税理士と十分な時間をかけて事前打ち合わせをすることが大切です。どの質問にはどう答えるか、確認が必要な事項は何か、あらかじめ整理しておくだけで、調査の結果は大きく変わります。
今期の決算を終えたら、一度「税務調査が来たときの対応マニュアル」を顧問税理士と作っておくことをおすすめします。備えがあれば、どんな調査にも落ち着いて対応できます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。