先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「年収が5,000万円あるのに、税金だけで毎年2,000万円以上持っていかれるんですよね…なんとかなりませんか?」
決算のたびにこういう声を聞きます。でも正直に言うと、多くの社長がまだ試していない、シンプルで合法的な方法があります。それが「家族への役員報酬の分散」です。
年収5,000万円を1人で受け取ると何が起きるか
日本の所得税は「累進課税」という仕組みになっています。稼げば稼ぐほど税率が上がるので、年収5,000万円を1人で受け取ると、住民税も合わせた実効税率はおよそ55%前後。5,000万円稼いでも手元に残るのは2,200万円ほどになります。
「自分が稼いだお金の半分以上が税金に消える」というのは、残念ながら本当の話です。
同じ5,000万円を4人で分けると何が変わるか
ここが本題です。
社長本人・配偶者・子ども2人の計4名で役員報酬を分散するとします。5,000万円を均等に分ければ1人あたり1,250万円。年収1,250万円の所得税率は33%前後なので、55%と比べると一気に税率が下がります。
累進課税の「低い税率帯」を1人で1回しか使えないところを、家族4人で4回使える。この差額が年間300万円超の節税につながります。
脱税でも抜け穴でもなく、税法の設計そのものを活用した合法的な手法です。
ただし、「実態」がないと一発アウト
ここは絶対に外せない注意点です。
税務署が問題にするのは「名義だけの役員」です。配偶者や子どもを役員に載せておきながら、実際には何もしていない場合、税務調査で役員報酬を「経費として認めない」と否認されることがあります。
こうなると節税どころか、追徴課税を受けるリスクが生じます。
最低限、以下の3点は整備しておいてください。
- 業務の実態を作る:経理補助、顧客対応、SNS運用など、具体的な職務を担当させる
- 議事録を残す:役員報酬の設定は株主総会・取締役会で決議し、議事録として保存する
- 報酬額に合理性を持たせる:業務内容に対して金額が妥当かどうかを意識する
特に「報酬額の合理性」は重要です。実態のない役員に月200万円の役員報酬を設定しても、いくら書類を揃えても税務調査で説明が難しくなります。業務内容と報酬水準のバランスを意識してください。
子どもを役員にする場合のポイント
未成年の子どもを役員にするのは現実的ではありませんが、20歳を超えた子どもや、法人の実務に携わっている場合は役員として認められるケースがあります。
子どもが別の会社に勤めながら兼務するケースも見られます。この場合、業務時間や役割を明確にしておかないと税務調査で指摘されやすくなります。「何をどれくらいやっているか」を言語化して記録しておくことが大切です。
今期中に動き出すべき理由
役員報酬には「定期同額給与」というルールがあります。事業年度開始から3ヶ月以内に設定しなければ、原則として経費として認められません。検討が遅れると「来期まで待つしかない」という状況になりかねません。
まず自社の役員構成と報酬配分を確認してみてください。社長1人に全額集中しているなら、分散の余地がある可能性は十分あります。
まだ家族を役員にしていないなら、今期中に税理士へ相談しておくことをおすすめします。報酬設計だけでなく、業務実態の整備も一緒にサポートしてもらえます。年300万円の差は、10年で3,000万円の差になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。