先日、売上10億円規模の建設会社の社長から連絡がありました。「税務調査が入って、5200万円の追徴通知が来た」と。声のトーンからも、かなり動揺しているのが伝わってきました。

正直なところ、それはある意味で予告された結末でした。

「3%しか来ない」は安心材料にならない

国税庁のデータによると、法人に対する実地調査の割合(実調率)は年間で約3%前後です。100社に3社しか来ない計算で、「うちには来ないだろう」と思っている社長も多いかもしれません。

でも、問題はそこではありません。

選ばれたとき、何が起きるか——です。問題が認定された場合の追徴税額は、軽微なケースでも数百万円。悪質と判断されれば、1000万、2000万どころか5000万円を超えることも珍しくありません。

追徴が膨らむ社長には共通点がある

多くの経営者の税務をみてきてわかったことがあります。大きな追徴を受ける社長には、判で押したように同じパターンがあります。それが次の4つです。

① 売上の一部が「どこかに消えている」

最もシンプルで、最も重大視されるケース。現金売上の一部を帳簿に計上せず、個人的に使っていたパターンです。「少しくらいいいだろう」と思いがちですが、これは脱税の中でも最も悪質と判断されやすい類型です。

銀行口座の入出金履歴と売上台帳の突合は、調査官が最初に行う作業のひとつ。「売掛金の回収がやたら少ない時期」「現金入金が申告売上より明らかに多い期間」といった痕跡は、必ずと言っていいほど拾われます。

② 家族役員への支出根拠が曖昧

奥様や子どもを役員にして役員報酬を払っている会社は多いですが、問題は「実態があるか」です。仕事の実態が認められない家族役員への報酬は、損金不算入として否認されます。

さらに「業務実態があるように見せかけていた」と判断された場合、仮装・隠蔽の認定にもつながります。「会議に名前だけ出席」「形式的に議事録だけ作成」といった後付け対応は、むしろ火に油を注ぐことになります。

③ 役員退職金の功績倍率が突出して高い

役員退職金は、適正額であれば全額損金算入できる強力な節税スキームです。計算式は「最終月額報酬 × 在籍年数 × 功績倍率」で、功績倍率の相場は社長で2.0〜3.0倍とされています。

ところが、この倍率を5.0倍、6.0倍に設定して「節税した」という話を聞くことがあります。功績倍率が一般的な水準を大きく超えると、過大役員退職金として一部が否認され、追徴の対象になります。「やり過ぎ」は確実にマークされます。

④ 関連会社との取引価格に合理性がない

グループ会社や、実質的に代表者が支配する別会社との間で、不自然に高い(または低い)取引価格を設定しているケースです。

たとえば、A社からB社へ相場の3倍の価格で業務委託費を計上していた場合、差額部分は「利益の移転」として否認されることがあります。「会社と会社の取引だから問題ない」は通用しません。独立した第三者間では成立しないような取引価格には、必ず合理的な説明が求められます。

「重加算税35%」が追徴を一気に膨らませる

4つの特徴の中でも、特に①と②は「仮装・隠蔽」と認定されやすいパターンです。

通常、追徴税額には過少申告加算税として10%が上乗せされます。しかし仮装・隠蔽が認定されると、これが重加算税35%に跳ね上がります。元の追徴が5000万円なら、加算税だけで1750万円。合計6750万円が一度に請求されることになります。

重加算税を避けるためには、何より「疑われる余地をなくすこと」が重要です。証憑の整備、議事録・契約書の作成、取引根拠の文書化——これらを日常業務の中で積み重ねておくことが、最大の防衛策になります。


税務調査は「悪い人だけが狙われる」のではありません。「説明できない人」も同じように狙われます。心当たりがある項目は、今期中に担当税理士と棚卸しをしておくことを強くおすすめします。調査が来る前に修正申告をしておくことで、ダメージを最小限に抑えられるケースも多いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。