先日、ある経営者からこんな相談を受けました。「シンガポールに子会社を設立して数年間、利益を現地に積み上げてきた。そこに突然、国税から資料の提出を求める連絡が来た」——話を聞きながら、私はその言葉の重さをしみじみと感じていました。

海外に子会社を持つ経営者の方には、これからお話しすることを一度真剣に考えてほしいのです。

税率が低い国の子会社は、全員が「対象候補」

日本のCFC税制(正式には「外国子会社合算税制」、通称タックスヘイブン対策税制)をひと言で言うと、「海外子会社の実効税率が一定水準を下回っていたら、その利益を日本親会社の所得に足して課税する」という制度です。

その基準となる税率が20%未満。香港(利益税率16.5%)やシンガポール(実効税率17%前後)は、構造によってはこの水準に引っかかります。「低税率国の子会社を活用した節税設計」が、そのままCFC税制の射程に入るわけです。

ただし、すべての海外子会社が合算課税されるわけではありません。問題になるのは「実態のない会社」です。

国税が本当に問題にしているのは「経済実態のない法人」

CFC税制の中でも特に厳しく扱われるのが、いわゆるペーパーカンパニーの認定です。現地に登記はあっても、従業員がいない、経営判断が現地でされていない、実際のビジネス活動が伴っていない——そういった会社が問題視されます。

経済実態のない法人と認定されると、受動的所得(配当・利息・使用料など)だけでなく、すべての所得が合算課税の対象になる可能性があります。

たとえば海外子会社に5億円の内部留保があった場合、その全額が日本での課税所得に算入される。法人税率を考えると、追徴税額だけで1億5,000万円を超えることも十分あり得る計算です。

追徴に「35%」が上乗せされる怖さ

さらに怖いのが、仮装・隠蔽ありと判断されたときの重加算税です。

通常の過少申告加算税が約10%であるのに対し、重加算税は35%。つまり本来の税額に35%が上乗せされた金額を払うことになります。延滞税も含めると、最終的な追徴額が億単位になった事例はすでに複数出ています。

「知らなかった」「税理士に任せていた」では通りません。税務調査でこの認定がされると、修正申告や不服申立てで戦う選択肢はありますが、いずれも長期戦かつ高コストです。

国税の「見つける力」が、10年前とまるで違う

「どうせ海外のことは見つからないだろう」と思っている方がいるとしたら、その前提は今や完全に崩れています。

日本は現在100カ国以上と租税条約・情報交換協定を締結しており、金融口座の残高情報が各国の税務当局間で自動的に共有されるCRS(共通報告基準)の仕組みも2017年から本格稼働しています。

つまり国税当局は、ある程度の規模の海外口座・海外子会社の情報を自動的に把握できる立場にあります。「海外に貯め込んでいるだけで見つからない」という時代は終わりました。

今すぐ確認したい3つのポイント

海外子会社を持っている経営者の方は、まずこの3点を確認してみてください。

  • 海外子会社の実効税率が20%を下回っていないか
  • 現地に実際のビジネス実態(スタッフ・オフィス・意思決定の所在)があるか
  • 過去5年分の申告でCFC税制の検討を適切に行っているか

これらのチェックは、国内税務のみを扱う税理士では判断が難しいケースが多くあります。国際税務を専門とする税理士・弁護士に相談することを強くおすすめします。

もし「過去の申告が不安」という状況なら、国税から指摘される前に自発的に修正申告を行う「自主修正」という選択肢もあります。指摘を受けてからでは重加算税のリスクが高まるため、早めに動くほど手が打ちやすくなります。

海外スキームを持っている方も、これから検討している方も、「今の設計が本当に適法かつ合理的か」を一度専門家と確認する機会を、ぜひ今期中に作っておいてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。