先日、年商15億円を超えた製造業の社長から、こんな相談を受けました。

「利益は出ているのに、税金で全部持っていかれる感覚です。なんとかなりませんか」

決算書を拝見すると、実効税率は33%台。利益1億円のうち約3,500万円が税金です。これは決して珍しい話ではありません。日本の法人実効税率は、法人税・住民税・事業税を合わせると33〜34%が当たり前の水準で、先進国の中でも高い部類に入ります。

「節税」と聞くと、経費を増やすとか、役員報酬を調整するといった手法を思い浮かべる方が多いと思います。でも年商10億円を超えてくると、そのレベルの話では限界があります。桁が違う節税を実現しようと思ったら、視野を「海外」に広げる必要があります。

日本と海外、税率の差は想像以上に大きい

シンガポールの法人税率は17%、UAEは2023年に法人税が導入されましたが、それでも9%です。日本の実効税率33〜34%と比べると、20ポイント近い差があります。

この差が、年商10億超えの規模になるとどれほどのインパクトになるか。仮に年間の課税所得が2億円あるとします。日本で納める税金は約6,700万円。同じ利益をシンガポールの子会社で稼いだ場合、3,400万円。差額は3,300万円です。

もちろん、「海外に法人を作れば節税できる」というほど単純な話ではありません。ここが、このスキームの核心部分です。

合法と違法を分けるのは「実体」があるかどうか

日本には「CFC税制(タックスヘイブン対策税制)」というルールがあります。簡単に言えば、「税率の低い国にペーパーカンパニーを作って利益を移しても、それは日本法人の所得として課税しますよ」という制度です。

紙の上だけで海外法人を作っても、税務署には認められません。現地で実際に事業が動いていること、つまり「実体(Substance)」を証明できることが前提です。

具体的には、こういった要件を満たす必要があります。現地に実際の事務所があること、現地の役員や従業員が実際に意思決定・業務遂行をしていること、グループ会社との取引が市場価格に基づいていること(移転価格税制への対応)。これらをきちんと整備して初めて、CFC税制の適用除外となり、現地の低税率を合法的に享受できます。

年商10億超えが、スタートラインになる理由

「自分も使えるのか」と思った社長もいるかもしれません。ただ正直なところ、このスキームには一定の規模が必要です。

海外法人の設立・維持には、現地のコンサルティング費用、会計・税務申告費用、役員コストなどが年間数百万円単位でかかります。日本側でも移転価格文書の整備など、追加の税務対応が生じます。そのコストを上回るリターンが出てくるのが、課税所得1〜2億円以上のラインです。この規模になれば、税率差だけで年間5,000万円以上の節税が視野に入ってきます。

もう一点、重要なのが「事業上の合理性」です。純粋に節税だけを目的として海外法人を設立すると、税務調査で実体を否認されるリスクがあります。「アジア市場への販路拡大」「海外調達ルートの確立」といった本物の事業目的があってこそ、このスキームは長期的に機能します。

相談すべきは「国際税務専門」の税理士

「うちの税理士に相談してみます」と言う社長は多いのですが、国内専門の税理士では対応が難しいケースがほとんどです。移転価格税制、CFC税制、各国の租税条約、OECDのBEPS対策など、国際税務は知識と実務経験の両方が必要な専門領域です。

国際税務を扱う税理士・税務法人に相談することが、第一歩になります。まず自社の事業規模・海外展開の可能性を整理した上で、専門家と設計を進めるのが正しい順序です。

年商10億円を超えたタイミングで、一度「税のグローバル最適化」を真剣に考えてみてください。日本の高税率を所与の条件として経営している社長と、合法的に最適化している社長とでは、10年後のキャッシュフローに億単位の差が生まれます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。