先日、年商12億円の卸売業を営む社長から、こんな質問を受けました。

「同業の仲間が実効税率を20%近く圧縮しているらしいんですが、本当にそんなことができるんですか?合法で?」

答えは「できます」。ただし、仕組みを正しく理解したうえで専門家と設計しなければ、節税どころか税務署から痛い目を見ることになります。富裕層の社長たちが活用しているこのスキームの全容を、できる限り平易に解説します。

海外子会社の配当、95%は日本で非課税になる

日本には「外国子会社配当益金不算入制度」という制度があります。難しい名前ですが、要するに海外子会社から受け取った配当の95%は、日本の法人税がかからないという仕組みです。

たとえばシンガポールに子会社を設立して事業を運営した場合を考えてみましょう。シンガポールの法人税率は最大17%。一方、日本の実効税率は中小法人でも約23〜34%、大企業では約34%になります。

シンガポールで年間1億円の利益を上げたとすると、現地で1,700万円を納税したあと、残り8,300万円を配当として日本の親会社に戻します。このとき、配当の95%(約7,885万円)には日本の法人税がかかりません。1億円の利益に対して実質的な税負担が1,700万円程度に抑えられる計算です。

日本で同じ1億円を稼いだ場合と比べると、2,000万円近い差が生まれます。年商10億円を超える社長の一部が実効税率を20%近く下げているというのは、このような仕組みによるものです。

「ペーパーカンパニー」では即アウト

ただし、ここからが重要です。

日本には「タックスヘイブン対策税制(CFC税制)」というルールがあり、現地に実態ある事業がなければ、海外子会社の利益はそのまま日本で合算課税されます。「シンガポールに名前だけの会社を作って利益を置いておけばいい」という考えは完全にアウトです。

税務署が求める「実態」のポイントはおおむねこうです。

  • 現地に独立した事務所(自社保有または賃貸)がある
  • 常勤の役員または従業員が現地に在籍している
  • 自ら継続的な事業活動を行っている

この要件をクリアできなければ節税効果はゼロ。それどころか設計ミスが後から発覚した場合には**重加算税(35%)**が課されるケースもあり、「知らなかった」では到底済まされません。スキームが実際に効果を発揮するのは、海外子会社に年間3,000万円以上の利益を蓄積できる規模からといわれています。

設計はビジネスの必然性から始める

では実際にどう組み立てるかというと、ポイントは一つです。節税のために海外法人を作るのではなく、事業の必然性があって海外展開し、結果として税負担も最適化される、という順序で設計すること。税務署はこの順序を非常に細かく見ています。

輸出入を手がける商社系の会社なら、シンガポールやドバイに中間法人を置いてマージンを現地に蓄積するパターンが使えることがあります。ITサービスやデジタルコンテンツ事業なら、東南アジアに開発・販売拠点を作って現地で売上を立てる形も選択肢の一つです。「自社の事業で海外でも本当に稼げるか」を問いながら設計するのが、スタート地点になります。

動き出す前に、専門家と二人三脚で

国際税務は、国内税務と比べて格段に複雑です。租税条約、移転価格税制、CFC税制が絡み合い、設計を一つ誤ると数千万円規模の追徴が発生した事例も実際にあります。

「知人の社長が成功していたから真似した」という形で独自に進めるのは非常に危険です。国際税務の経験が豊富な税理士・弁護士と、検討の最初の段階から組むことを強くおすすめします。

年商5億円を超えたあたりから、海外展開と税負担の最適化を真剣に考え始める社長が増えてきます。まだ漠然と「いつか海外も」と思っているなら、今期中に一度、国際税務の専門家に相談の場を設けてみてください。情報収集だけでも、見える景色は大きく変わります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。