先日、年商12億の製造業の社長から、こんな相談を受けました。
「競合が海外に子会社を作って節税してるって聞いたんだけど、うちも同じことできる?」
実は、この「海外子会社を使った節税」、正しく設計すれば合法的に法人税を数億円単位で圧縮できる、非常に強力なスキームです。ただ、知らずに組むと税務署から多額の追徴課税を受けるリスクもある。今日は、そのリアルな実態をお伝えします。
日本の法人税率、実は34%もとられている
まず前提として、日本の法人実効税率は約34%です。年商10億円を超える会社であれば、課税所得が大きくなるほど、この税率の重さを痛感する場面が増えてきます。
一方、シンガポールの法人税率は約17%。香港は約16.5%。日本と比べると、ほぼ半分しかかかりません。
「じゃあ、海外に会社を作ってそこで利益を出せばいい」という発想が生まれるわけですが、ここには複雑なルールが絡んできます。
シンガポール子会社で3億圧縮できるケース
具体的な数字で見てみましょう。
国内の年間課税所得が10億円あったとします。日本で全額課税されると約3.4億円の税金がかかります。ここでシンガポールに「実態ある子会社」を設立し、移転価格税制のルール内で利益の一部をシンガポールに配分できたとします。
仮に課税所得の30%、つまり3億円分をシンガポールに移せれば、その部分にかかる税率は17%になります。日本で課税された場合との差額は約5,100万円。グループ全体の規模や構造によっては、1年で数億円の節税になるケースも実際にあります。
「移転価格税制」というルール
ただし、親会社と子会社の間で利益を自由に動かせるわけではありません。「移転価格税制」という厳格なルールがあります。
これは、グループ会社間の取引価格を「通常の市場取引と同じ価格」にするよう求めるルールです。製品を親会社から子会社に意図的に安く売って子会社の利益を膨らませるような操作は、税務署に否認されます。適切なビジネス上の理由があり、市場価格として合理的に説明できることが大前提です。
「外国子会社合算税制」という壁
もうひとつ、必ず理解しておかなければならないのが「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)」です。
簡単に言うと、ペーパーカンパニーは認めないというルールです。
低税率国に形だけの会社を作って利益を積み上げても、日本の税務署はそれを親会社の所得として合算課税してしまいます。「実態のある事業を現地でやっているか」が厳しくチェックされます。具体的には、現地に固定した事務所があること、現地の従業員が実際に業務を行っていること、事業の意思決定が現地で行われていること——これらを満たしていないと、どんなに精巧なスキームを組んでも一発で否認されます。
本当に機能する会社のパターン
では、このスキームが合法的に機能するのはどういうケースか。
年商10億超で海外取引がある、あるいは海外展開を検討している会社が中心です。たとえば、シンガポールに営業・マーケティングの拠点を置き、東南アジア市場を本格開拓している実態があれば話が変わります。
コスト削減や市場開拓という正当なビジネス理由があった上で、その副産物として節税効果も得られる——この設計が理想的です。節税ありきで海外子会社を作るのは本末転倒で、リスクも高い。ビジネスとして成り立つ前提があってこそ、節税の恩恵を受けられます。
検討するなら今が動き時
国際税務の環境は年々厳しくなっています。OECDが主導するBEPS(税源浸食と利益移転)対策で各国の課税当局の連携が強化されており、以前は見逃されていたスキームが今では即アウトになるケースも増えています。
一方で、適切に設計された海外子会社スキームは今も有効です。年商10億を超えてきたなら、一度、国際税務に強い税理士に相談してみてください。「うちには関係ない」と思っていた社長ほど、意外と使えるケースが多いものです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。