5月になると、毎年決まって届くものがあります。そう、自動車税の納付書です。「また今年も来たか」と思いながら、社用車の台数分をまとめて支払っている社長も多いのではないでしょうか。
でも少し立ち止まってみてください。その納付書を眺めながら、「そういえば役員車の経費処理、ちゃんとできているかな」と考えたことはありますか?
役員車5台で、実は年1000万円の節税チャンスがある
役員車を複数台保有している会社は珍しくありません。社長、専務、常務……とそれぞれの役員が乗る車を合わせると、5台になるケースはよくあります。
車両の取得費だけでなく、自動車税、車検費用、ガソリン代、駐車場代、保険料——これらを法人でまとめて経費計上すると、5台分で年間3000万円を超えることもあります。実効税率34%で計算すれば、節税効果は年間約1000万円。この差を活用できているかどうかで、手元に残るキャッシュが毎年大きく変わってきます。
ところが、その1000万円を丸ごと捨てている会社が後を絶ちません。問題は節税しないことではなく、「やっているつもりが実はリスクを抱えている」ケースです。
「全額業務用」と申告したら、税務調査で詰められた
法人保有の車両は「全部経費になる」と思っている社長は多いです。確かに業務に使う部分は経費になります。しかし役員車が私用にも使われている場合、その割合に応じて按分しなければなりません。
走行記録もなく「全額業務用」として申告していると、税務調査のときに一発でアウトになります。問題はそのペナルティの重さです。按分否認による追徴課税に加えて、**重加算税が35%**上乗せされることがあります。「意図的に過少申告した」と判断された場合、追徴額は当初の想定の何倍にも膨らむことがあります。
「知らなかった」では済まない世界です。そして税務署の目は、役員車という「私用の可能性が高い資産」に対して、特に厳しく向けられます。
走行記録、ちゃんとつけていますか?
正しい対応はシンプルです。月次での走行記録を徹底し、業務走行と私用走行を区分して按分する。これが税務調査に耐えられる唯一の方法です。
走行記録の管理は面倒に感じるかもしれませんが、最近はスマートフォンのGPSアプリや車載デバイスで自動記録するサービスも増えています。一度仕組みを作ってしまえば、あとは毎月のルーティンになります。役員ごとに記録フォーマットを統一して、経理が集計できる体制を整えておくのが理想です。
逆に言えば、きちんと記録さえあれば、業務割合が高い役員車については大部分を経費計上できます。記録があるかないかで、節税できる金額が大きく変わります。
リースか購入か、売却タイミングも戦略のうち
走行記録の整備と並行して考えたいのが、「リースvs購入」の選択と売却タイミングです。
購入の場合は減価償却のスケジュールが法定で決まっているため、「利益が出た期に高額車を一括購入して節税」という単純な発想だと効果が限定されます。一方、オペレーティングリースでは月々のリース料が全額経費になるため、キャッシュフロー管理がしやすいメリットがあります。
売却タイミングも重要です。利益が大きい年度末に減価償却の進んだ車両を売却して売却損を立てる、赤字が見込まれる期は避けるといった判断が、節税額に直結します。「古くなったから買い替え」ではなく、決算数字と照らし合わせて動くことで、税負担を大きく変えられることがあります。
自動車税の通知は、経費処理を見直すサイン
毎年5月に届く自動車税の通知は、「今の車両管理で本当に大丈夫か?」を確認する絶好のタイミングです。
走行記録の仕組みはあるか。按分の根拠を税務署に説明できるか。リース・購入・売却の判断は利益計画と連動しているか——この3点だけでも確認してみてください。
1台1台は小さなコストに見えても、複数台・複数年で積み上げると、経費処理の差が億単位になることもあります。まだ走行記録の仕組みを整えていないなら、今期中に着手しておくことを強くおすすめします。税理士に相談するなら、「走行記録の管理方法」と「次の買い替えのタイミング」をセットで聞いてみるといいでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。