先日、建設業を営む年商11億の社長から、青ざめた様子で連絡が入りました。「3年前に導入した節税スキームについて、税務署から調査の予告が届いて…」という内容でした。
当時は「これで数千万節税できる」と聞かされて導入した法人保険と海外法人の組み合わせ。ところが、その節税額が丸ごと追徴される可能性が出てきた——これが現実でした。
年商10億を超えると「税務署の視野」に入る
税務調査には、内部で使われている選定基準があります。公式には明かされていませんが、年商規模が大きいほど選定率が高くなることは、現場の税理士なら誰もが肌で知っています。
年商5億未満の会社への調査頻度が数十年に1度程度と言われる一方、年商10億を超えると、それが数年単位に縮まります。さらに大型の節税スキームを実施した直後は、税務署の目が特に向きやすくなります。
「まだ調査が来ていないから大丈夫」というのは、単に順番待ちの列に並んでいるだけかもしれません。
追徴3億超がなぜ起きるのか
税務調査で本当に怖いのは、本税だけではありません。問題になるのが「重加算税」です。
通常の申告漏れには10〜15%の加算税が課されますが、税務署が「隠蔽・仮装があった」と判断した場合は、重加算税として35%が上乗せされます。さらに延滞税も加わるため、追徴額が元の節税効果を大幅に上回るケースが出てきます。
5年間で2億円節税したつもりが、重加算税と延滞税を含めると3億円以上の追徴になる——これは理論上の話ではなく、実際に起きていることです。節税できた分が消えるだけならまだしも、手元の現金が大幅に削られるという最悪の結末を迎えることになります。
否認されやすい「典型スキーム」はこれだ
税務調査で否認されやすいスキームには、一定のパターンがあります。代表的なものが以下の3つです。
法人保険の解約返戻金スキーム 2019年の通達改正後も、変形版のスキームが提案され続けています。ただし税務署の実務では、「節税目的の保険加入」に対して厳しい目が向けられており、解約のタイミングや実態によっては損金算入が否認されるリスクがあります。
海外法人への業務委託・ロイヤリティ支払い 実態の薄い業務委託費や著作権使用料を海外法人に支払い、日本法人の利益を圧縮する手法です。「業務の実態があるか」「価格が適正か」が移転価格税制の観点から争点になります。
不動産SPCを使った損益通算 SPCを設立して減価償却費で赤字を作り、法人税を圧縮するスキームです。事業実態の有無や資金の流れが疑問視されると、損金算入が認められないことがあります。
これら3つに共通するのは、「節税効果は出ているが、実態が伴っていない」と認定されやすい点です。
なぜ「3〜5年後」に調査が来るのか
スキームを導入した直後ではなく、3〜5年後に調査が来ることが多いのには理由があります。
税務署はすぐには動きません。申告書を受け取ってから数年かけて、他社との比較、解約返戻金の動き、海外送金の履歴などをじっくり確認します。そして「これは調べる価値がある」と判断したタイミングで調査に入ってくるのです。
スキームを導入して「問題なかった」と安心している会社のほとんどは、調査がまだ来ていないだけです。時効(原則5年、悪質な場合は7年)の範囲内であれば、いつでも調査対象になり得ます。
今すぐ担当税理士に確認すべきこと
「うちは大丈夫だろうか」と感じた方は、次の3点を税理士に確認することをおすすめします。
- 過去5年以内に導入したスキームで、実態の伴い方に不安があるもの
- 解約返戻金や海外送金の処理が適切に申告されているか
- 税務調査が入った場合の想定追徴額と現金の準備状況
「節税しすぎると調査が来る」というのは本当のことです。ただ、問題なのは節税の量ではなく質です。実態が伴い、税務上の根拠がしっかりした節税であれば、調査が来ても正面から対応できます。
怖いのは、実態のないスキームを「大丈夫だろう」と放置しているケースです。担当税理士に相談しにくい場合は、セカンドオピニオンとして別の専門家に確認してもらうことも有効です。追徴が来てからでは遅い——それが税務調査の本当の怖さです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。