先日、年商10億円の製造業を経営するK社長から、青ざめた声で電話が来ました。「税務署から調査の通知が届いた。3年前に組んだオペレーティングリース、問題ないですよね?」
結論から言えば、K社長の案件は大きな問題なく終わりました。ただ、同じようなスキームを使っていて数億円単位の追徴課税を受けた社長の話を、私はいくつも知っています。何が明暗を分けたのか――今日はその話をします。
節税をがんばるほど、調査されやすくなる現実
まず知っておいてほしいのは、大型節税を積極的に実行している法人ほど、税務調査の対象になりやすいという現実です。
オペレーティングリースや海外スキームを活用している法人は、税務署内部の「調査優先リスト」に入りやすいとされています。調査される確率が通常企業の3〜5倍になるというのは、税務の世界では広く知られた話です。
「節税できた、ひと安心」で終わらせていると、数年後に調査官が扉をノックしてきます。節税の実行と同時に、調査リスクへの備えを考えなければなりません。
税務署が本当に見ているもの
では、なぜきちんと契約書を作っているのに問題になるのでしょうか。
答えはシンプルです。税務署は「形式」ではなく「実体」を見ているからです。
調査官は契約書の体裁だけを確認しているわけではありません。その取引に本当の経済的合理性があるか、実際の意思決定や資金の流れが契約の内容と一致しているか、そういった点を一つひとつ丁寧にひも解いていきます。
たとえばあるスキームで損金を作った場合、「なぜこのタイミングで組んだのか」「この金額の根拠は何か」「誰がどう判断したのか」という質問に、書類を示しながら説明できなければなりません。書類が揃っていても、説明が曖昧であれば「形式だけ整えた契約」と判定されます。
そうなると、単純な税額の否認だけでは済まなくなります。
重加算税35%が乗ると、請求額はこうなる
通常の過少申告であれば、本来の税額への罰則は10〜15%程度です。ところが「仮装・隠蔽あり」と判断されると、話が一気に変わります。
重加算税として35%が上乗せされるのです。
仮に否認された税額が1億円だったとしましょう。重加算税が加われば1億3,500万円。さらに延滞税が数年分積み重なると、最終的な請求額は見る間に膨らんでいきます。3億円を超える追徴課税の事例は、残念ながら珍しくありません。
「まさか自分が」という社長ほど、事前の準備が甘かった、というのが共通点です。
防衛の出発点は「否認されたとき」を想定すること
では、どうすれば良いのか。
一番大切なのは、スキームを組む段階で同時に「このスキームが否認されたとき、どう説明するか」を考えておくことです。税務の世界では「否認シナリオの事前シミュレーション」と呼ばれるアプローチです。
具体的に整備しておくべき書類や記録は、取締役会の議事録や稟議書、経済的合理性を示す資料、実際のキャッシュフローの記録、顧問税理士とのやり取りのログなどです。これらが揃っていれば、調査が来ても「なぜこの取引をしたか」を客観的に説明できます。
逆にこの整備が甘い会社は、調査が入った瞬間に説明ができず、「意図的に税を逃れた」と見なされるリスクが一気に高まります。
スキームは「組んで終わり」ではない
もう一点、見落としがちなことがあります。大型節税スキームは、実行した後も管理が必要だということです。
オペレーティングリースであれば、契約期間中ずっとリスクを抱えています。途中解約すれば益金が発生しますし、数年後の調査で「当時なぜ必要だったか」を改めて問われることもあります。組んだ後に放置するのが、実は最も危険なパターンです。
定期的に顧問税理士と書類の整備状況を確認し、万が一の調査に備えたシナリオを更新しておく。これが今の節税の「正しい使い方」だと思っています。
今、大型節税スキームを活用していて「そういえば証拠書類の整備ができていないな」と感じているなら、次の決算を迎える前に顧問税理士に相談することをおすすめします。調査通知が届いてから動いても、できることには限りがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。