先日、年商8億円ほどの建設会社の社長から連絡が来ました。「JOLCOと法人保険を組み合わせてやってきたけど、最近なんか不安で」という内容でした。
話を聞いてみると、確かに理由のある不安でした。複数の節税スキームを並行して使っているものの、それぞれの「出口」がまったく設計されていなかったのです。
今、税務署は投資型節税を積極的に活用している会社を重点調査対象に設定しています。「節税できてる」と思っているそのスキームに、実は3つの落とし穴が隠れているかもしれません。
落とし穴その1:「出口」を考えていない節税は節税じゃない
JOLCOやオペレーティングリースといった投資型スキームは、「損金算入できる」という点で人気があります。しかし正確に言えば、これは課税の繰延であって節税ではありません。
損金に算入した金額は、解約時や満期時に一括で益金算入されます。つまり「今期に税金を払わない代わりに、将来まとめて払う」という構造です。
問題は出口設計がないケースです。解約時に退職金などで相殺できる設計になっていなければ、むしろ大きな課税負担が生まれます。「損金になるから得」という入口だけの理解で契約してしまうと、数年後の精算時に青ざめることになります。
落とし穴その2:2019年以前の感覚で法人保険を処理している
法人向け生命保険の税務ルールは2019年に大きく変わりました。ところが、変更前の感覚のまま処理を続けているケースが今も散見されます。
改正後のルールでは、解約返戻率が85%を超える保険は保険料の9割を資産計上しなければなりません。にもかかわらず全額損金として処理し続けている場合、税務調査で問題になります。
遡及期間は最大5年。重加算税が適用されると35%が上乗せされます。「ずっとやってきたから大丈夫」という認識は、2019年の改正を境に通用しなくなっています。契約中の保険の解約返戻率と現在の処理方法を、今すぐ確認してほしいのです。
落とし穴その3:複数スキームを組み合わせると一括精査される
「一つひとつは問題ない」というスキームも、組み合わせると別の話になります。
JOLCO+法人保険+不動産SPCを同時に展開している場合、各スキームの課税繰延が重複します。税務署の目には「意図的に課税を先送りしている」という絵として映り、調査が入ると三つのスキームが連動して一括精査される可能性があります。
個別に見れば適法でも、組み合わせの結果として租税回避行為と認定されるリスクがあります。特に「オペリ+経営者保険+不動産系」の三点セットは要注意です。複数スキームを使うなら、組み合わせの整合性を必ず専門家に確認してください。
節税の「入口」より「出口」を先に設計する
三つの落とし穴に共通しているのは、「入口(今期の節税効果)」だけを見て「出口(将来の課税インパクト)」を考えていないという点です。
節税スキームは「今の税金を減らすツール」である以上、必ず将来に課税タイミングが来ます。退職金の見込み時期、解約のタイミング、不動産の出口戦略——これらをセットで設計することが、本当の意味での節税です。
もし今、複数のスキームを組み合わせているなら、一度全体を棚卸しする機会を作ってください。「今の構成で、どんな調査が来ても説明できるか?」——この問いに自信を持って答えられるかどうかが、一つの判断基準になります。現在のスキーム構成を信頼できる税理士と一緒に点検しておくことを、強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。