先日、知人の経営者から「税務調査の事前通知が来た」という連絡がありました。年商3億円ほどの卸売業で、「特に問題はないはず」と思っていたそうです。でも、改めて帳簿を点検してみると、調査官が必ず目を光らせる箇所がいくつも出てきた——というのが実態でした。

税務調査は、何か特別なことをした企業だけに来るわけではありません。ある程度の規模の法人であれば、数年に一度は「お声がかかる」ものです。問題は、調査が来てから慌てても遅いということ。

今回は、調査官が必ずチェックする3項目をお伝えします。読み終えたら、自社の状況を今すぐ確認してみてください。

3位:交際費の記録、5項目すべて揃っていますか?

「1万円以下の飲食費なら、レシートがあれば大丈夫でしょ?」——そう思っている社長は多いのですが、実は大きな落とし穴があります。

法人の交際費として損金算入するには、①年月日、②参加者の氏名と所属・関係性、③参加人数、④金額、⑤店舗名——この5項目を記録しておく義務があります。金額の大小にかかわらず、です。

調査官が特に目を向けるのが、記録の「抜け」です。参加者名は書いてあっても「会社名・関係性」が空欄、というケースが非常に多い。1項目でも欠けていると、その支出は全額損金算入を否認される可能性があります。

経費精算アプリを使っている会社も増えていますが、出力した際に全項目が揃っているかを一度確認しておくと安心です。日頃から「5項目セット」で記録する習慣が、最大の防御になります。

2位:法人保険の解約返戻金、タイミングを設計していますか?

法人保険を活用した節税は、以前から広く知られてきました。ただし、2019年の国税庁通達改正以降、高額返戻型保険の取り扱いは大きく変わっています。

最高解約返戻率が85%を超える保険は、保険料を全額損金算入することができません。それだけでなく、解約時の返戻金の処理を誤ると、課税が一気に集中することになります。

特に注意が必要なのが、退職金との「同年度合わせ」です。法人保険を退職金の財源として活用する場合、解約と退職金の支払いを同じ事業年度に行うことが大前提。これがずれてしまうと、解約返戻金だけが益金に計上され、税負担が直撃します。

よく「法人保険は節税になる」と言われますが、正確には「課税の繰り延べ」です。いつか必ず税金を払う前提で、いつ・どのタイミングで解約するかを設計しておかなければ、加入した意味が消えてしまいます。加入中の保険がある方は、担当税理士と解約シミュレーションを一度やっておくことをおすすめします。

1位:役員報酬、期中に変更していませんか?

指摘率ナンバーワンが、役員報酬です。経営者であれば必ず押さえておきたい項目です。

法人税法上、役員報酬を損金算入するには「定期同額給与」であることが条件です。毎月、決まった金額を決まった日に支払う必要があるということ。期中に増額・減額すると、その変更分は損金不算入となり、法人税の課税対象になります。

では、いつ変更すればいいのか。原則として、事業年度開始から3か月以内です。この期間に株主総会(または取締役会)で決議し、議事録を保管しておくことが必要です。議事録がない、変更時期が3か月を超えている——これが調査で否認される典型パターンです。

さらに怖いのが「過大役員報酬」の認定です。会社の規模・業績・同業他社の水準と比べて不相当に高いと判断されると、超過分が損金不算入となります。数千万〜億単位の否認になるケースも実際に存在します。役員報酬の金額・変更タイミング・議事録の三点セットを、今期中に必ず確認しておいてください。

調査は「準備した人が勝つ」ゲームです

税務調査には事前通知があり、通常は数日〜1週間ほどの猶予があります。でも、その短期間で5年分の帳簿を整えるのは現実的ではありません。

日頃から「調査が来ても説明できる状態」を保っておくことが、一番の防御策です。交際費の記録、保険の解約設計、役員報酬の変更手続き——この3つを今期のうちに点検しておくだけで、数百万〜数千万円規模の否認を未然に防げる可能性があります。

担当の税理士に「うちはこの3項目、大丈夫ですか?」と一度聞いてみてください。それだけで、経営の安心感がまったく変わります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。