先日、株式投資と不動産で年間1億円近い配当収益を得ている社長から相談を受けました。「これだけ稼いでも、手元に残るのは半分以下なんです。何か方法はないですか」——そう話す顔に、悔しさがにじんでいました。
話を聞くと、すべての配当を個人名義で受け取っていたのです。
個人受取の「見えないコスト」
投資収益を個人で受け取ると、配当所得として課税されます。所得が高い社長の場合、所得税と住民税を合算すると実質的な税率は40〜55%に達することもめずらしくありません。
年間1億円の配当があっても、手取りは約4,500万円。残りの5,500万円以上が税金として消えていく計算です。投資で稼いでも「半分は国のもの」という感覚は、高収益を得るほど重くなります。
ただ、これはあくまで「個人で受け取った場合」の話です。
法人で受け取ると何が変わるのか
法人が配当を受け取る場合、「受取配当等の益金不算入制度」という仕組みが使えます。
簡単に言うと、一定の要件を満たした株式からの配当は、法人の課税対象(益金)に算入しなくていい、という制度です。つまり、受け取った配当に法人税がかからない場合があります。
特に大きいのが、完全子会社(株式100%保有)からの配当です。この場合、受け取った配当の全額が益金不算入になります。持株比率が50%超〜100%未満の「関連法人株式等」でも95%(負債利子控除後)、それ以下の「その他株式等」でも50%が対象です。
先ほどの事例で考えると、1億円の配当を完全子会社から法人で受け取った場合、益金不算入なので法人税はゼロ。手取り額は個人受取の約4,500万円に対して、法人では1億円がそのまま社内留保に回せます。差は5,500万円以上——同じ配当でも、受け取る「器」が違うだけでこれほどの開きが生まれます。
設計ミスで否認されるケース
「すぐに法人を作って投資を始めよう」と思ったなら、少し待ってください。
益金不算入の恩恵を受けるには、税務上の要件をきちんと満たした設計が必要です。形式だけ子会社を作って配当を流すような構造は、税務署から「実態がない」と判断されて否認されるリスクがあります。
よく見られる設計ミスを挙げると——事業実態のない子会社をペーパー的に設立する、配当確定の直前にだけ株式を取得して確定後に売却する(短期保有株式は不算入の対象外)、親子間の取引価格が恣意的で経済合理性に乏しい——こういったケースは税務調査のターゲットになりやすいです。
また、法人に留保した資金を最終的に個人に戻すときは、役員報酬・退職金・配当などの形で課税が生じます。「法人を使えば永遠に非課税」ではなく、「いつ・どの形で・いくら出すか」を設計することで、生涯トータルの税負担を最小化するのが本質です。
資産の蓄積スピードが変わる
法人経由の投資は、うまく設計すれば実効税率を20〜30%以上圧縮できるケースがあります。逆に設計を間違えると、余計なコストと否認リスクを抱えることになります。
持株会社や投資法人の活用は、今すぐ動けるテーマです。もし現在、投資収益をすべて個人で受け取っているなら、今期中に「法人でまとめて受け取る設計」を税理士と相談してみてください。器を変えるだけで、資産の蓄積スピードは大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。