先日、ある社長からこんな相談を受けました。「法人の口座に余剰資金が5億ほどあって、上場株式でぼちぼち運用しているんですが、なんとなく税金がもったいない気がしていて…」と。
そのご感覚、実は正しいんです。そして2026年の今、この問題を放置しておくのは、じわじわと損をし続けている状態と言っても過言ではありません。
「益金不算入」の落とし穴を知っていますか
法人が上場株式から受取配当を得たとき、「益金不算入」という仕組みで一部が非課税になります。ただし、ここに条件があります。
持株比率が5%未満の銘柄——つまり、分散投資スタイルで複数の株式を少しずつ持っているケースの多くが該当します——は、受取配当のうち益金不算入にできるのはわずか2割だけです。残り8割には、法人実効税率の約34%がそのままかかってきます。
5億円を運用して年3%の配当利回りがあると仮定してみましょう。年間の配当収入は1,500万円。そのうち1,200万円(8割)に34%をかけると、税負担は年間で約408万円になります。これが毎年、静かに積み上がっていきます。
この「見えない税コスト」に気づいていない社長は、意外と多いんです。
解決策は「持株会社スキーム」にある
この問題の根本的な解決策が、持株会社スキームです。
仕組みはシンプルです。グループ内の子会社に対する持株比率を3分の1超(33.4%以上)に引き上げると、その子会社からの受取配当は100%益金不算入になります。グループ内の配当が、実質的に非課税で流れるようになるわけです。
先ほどの例で計算してみると、益金不算入が2割から100%に変わるだけで、課税対象は1,200万円からゼロに。税負担の408万円がほぼ消えます。規模感や配当利回りによっては、年間で1,000万円を超える差が生まれることもあります。
もちろん、持株会社の設立や株式移動には初期コストがかかります。ただ、5億円規模の運用であれば、多くのケースで数年以内に投資回収できます。
2026年の今、なぜ動くべきなのか
「いつかやろう」と思いながら後回しにしているうちに、税制改正は着々と進んでいます。
2026年は特に、法人の金融投資にまつわる税制の見直し議論が活発化している年です。現行の益金不算入ルールについても「大企業優遇では」という批判が以前からあり、制度が縮小される方向に動く可能性はゼロではありません。
今の制度が使えるうちに最適な設計を組んでおく——これが節税の鉄則です。制度が変わってから慌てても、間に合わないことがほとんどです。
一度確認しておきたい3つのポイント
自社の状況を振り返るとき、以下を確認してみてください。
- 法人口座で保有する上場株式の持株比率は、ほとんどが5%未満か
- グループ会社間での配当のやり取りが発生しているか
- 持株会社の設立を検討したことが一度もないか
1つでも当てはまるなら、専門家に試算してもらう価値は十分あります。「大した額じゃないだろう」と思っていた方が、シミュレーションを見て驚くケースは少なくありません。
動く前に知っておくべきこと
持株会社スキームは強力ですが、万能ではありません。持株比率の引き上げには資金移動や株式取得が伴い、現在の株主構成や会社規模によっては制約が出ることもあります。みなし配当課税など、想定外のコストが生じるケースもあるため、事前のシミュレーションは必須です。
この領域は「調べてやってみる」ではなく、信頼できる税理士と二人三脚で進めるのが鉄則です。遠回りに見えて、それが一番の近道です。
法人投資の税コストをまだ一度も試算したことがないなら、今期の決算が終わったタイミングで相談してみることをおすすめします。設計を変えるなら、早いほど確実に得です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。