先日、年商20億を超えるグループ企業を経営する社長から、こんな相談を受けました。「3社をバラバラに経営しているけど、税金が高くて仕方ない。何かいい方法はない?」
話を聞いてみると、グループ全体で売上は堅調なのに、1社が赤字でも他の黒字法人でその損失を活かせない状態が続いていました。それぞれの法人に実効税率34%がそのまま乗り、払わなくてもいい税金を何千万も積み重ねていたんです。
「持株会社、作ったことありますか?」と聞いたら、「名前は聞いたことあるけど、よくわからない」という答えが返ってきました。
持株会社があると、何が変わるのか
持株会社(ホールディングス)とは、グループの頂点に置く会社のことです。各事業会社の株を持株会社が保有する形にすることで、グループ全体を一つの器として管理できるようになります。
一番の旨みは、「グループ通算制度」が使えること。これは、グループ内の複数法人の黒字と赤字を合算して法人税を計算できる制度です。
たとえば、A社が黒字5億円、B社が赤字2億円だとします。バラバラに課税されるとA社には5億円に対して税金がかかりますが、グループ通算を使えば合算後の3億円にしか課税されません。2億円分の利益がそのまま節税の対象になるわけです。
年3億の差が生まれるカラクリ
実効税率は34%前後です。合算できる損益が2億円あれば、それだけで節税額は6,800万円。さらに複数法人、複数の事業年度でこれが積み重なると、5年で数億円単位の税負担の差が生まれます。
冒頭の社長のケースでも、精査してみると5年間で支払いすぎていた税金は合計2億8,000万円に上りました。「持株化していれば」という話です。グループ規模が大きくなるほど、この差は広がっていきます。
配当も実質タダになる
持株会社のもう一つの武器は「受取配当の益金不算入制度」です。
事業会社から持株会社へ配当を行う場合、持株比率が高ければその配当金はほぼ非課税になります。グループ内でキャッシュを動かすたびに税金が引かれる……という二重課税の悩みが解消されるんです。
たとえば、A社の利益を新しい事業の資金として使いたい場合、A社に留保せず持株会社に上げておけば、そこから各社へ効率よく配分できます。グループのキャッシュを「生きた形」で動かせるようになる。資金効率がまったく変わってきます。
ただし、設計を間違えると逆効果になる
持株化がいつでも得かというと、そうではありません。いくつかの注意点があります。
まず、グループ通算制度の申請は事前に税務署への届出が必要で、一度適用したら脱退に5年間の縛りがあります。また、すべての法人が連帯納税義務を負うため、1社が税金を払えない場合にグループ全体へ影響が出る仕組みです。
さらに、持株会社の設立コストや管理コスト、組織再編税制の適用要件など、専門的な判断が必要な局面が多い。「節税になると聞いたから」と雑に進めると、かえって税負担が増えることもあります。あくまで設計が肝心です。
「知らない」まま払い続ける税金が一番高い
税法の知識は、知っている人だけが得をするゲームです。
グループ通算制度も、益金不算入制度も、知っている社長は当たり前のように使っています。知らなかったから払い続けた——というのは、法律的には何も問題ありません。でも経営者としては、知らないまま数億円を置いてきたことになる。
複数法人を持っている、あるいは今後グループ展開を考えているなら、持株化の検討は一度しておく価値があります。特に黒字法人と赤字法人が混在しているなら、今すぐ試算してみる価値があります。
顧問税理士に「グループ通算制度、うちは使えますか?」と一言聞いてみてください。その答えが、億単位の差になって返ってくることがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。