5月になると、決まってこんな相談が増えます。「自動車税の通知が来たんですけど、うちの車って経費になりますよね?」
この質問への答えは、シンプルです。ポイントは法人名義か個人名義か、ただそれだけです。名義ひとつで、年間数百万円の差が生まれることもあります。
個人名義のままでは、維持費が1円も損金にならない
先日、年商4億円の建設会社を経営する社長と話す機会がありました。毎日現場に自分の車(個人名義)で向かっているのに、「ずっと経費にできていると思っていた」とおっしゃっていました。
残念ながら、それは誤解です。実態として業務に使っていても、名義が個人のままでは法人の経費にはなりません。ガソリン代を実費精算する方法なら一部は経費にできますが、自動車税・保険料・車検費用を丸ごと損金にするのは難しい。個人名義のままでは、節税のチャンスを毎年見逃し続けていることになります。
法人名義にすれば、ここまで経費にできる
法人名義の社用車に関わる費用は、業務利用分について全額損金として計上できます。対象になる費用を並べてみると、こうなります。
- 毎年5月課税の自動車税
- 任意保険・自賠責保険の保険料
- ガソリン代・高速道路代
- 駐車場代・コインパーキング
- 車検費用・整備・修理費用
- 車両本体の減価償却費
1台あたり、これらを合計すると年間150〜200万円になることも珍しくありません。
複数台を集約すると、年間200万円の節税になる
仮に社用車を3〜4台、すべて法人名義に集約した場合を試算してみます。1台あたりの年間維持費を150〜200万円とすると、3〜4台で年間600万円規模の経費が生まれます。法人の実効税率を33%として計算すると、600万円 × 33% = 約200万円の節税になります。
個人名義のままだったら、この節税はゼロです。名義を変えるだけで毎年200万円の差がつくのですから、放置しておくのはもったいない話です。
5月に動く理由——廃車時の月割り還付も使える
自動車税は毎年5月1日時点の所有者に課税されます。このタイミングを知っているだけで、廃車するときに少しトクができます。
5月以降に廃車すると、課税済みの自動車税が月割りで還付されます。6月に廃車すれば11か月分、10月に廃車すれば7か月分が戻ってくる計算です。逆に4月中に廃車してしまうと、その年の自動車税は課税前のため還付はゼロになります。
1台あたり数万円の話ですが、複数台ある会社なら積み重なります。「廃車するタイミング」も、れっきとした節税の判断です。
注意点——「業務で使った」を証明する記録が命
社用車の経費計上で最も重要なのが、使用実態の記録です。「社用車として使っています」と申告しても、記録がなければ税務調査で否認されるリスクがあります。
最低限、日付・行先・走行距離の走行記録を残しておきましょう。専用のアプリでも、スプレッドシートでも構いません。「いつ、どこへ、なんのために走ったか」が後から説明できる状態にしておくことが、税務リスクを下げる最大のポイントです。
また、役員や家族も使う車を法人名義にする場合、私的利用分を按分して計上する必要があります。按分の根拠は走行記録から算出するのが一般的ですので、記録なしでは話が成り立ちません。ここは手を抜かないようにしましょう。
今期中に動くかどうかで、来年の税額が変わる
社用車の節税効果は、業種・台数・利用実態によって大きく変わります。外回りや現場移動が多い業種(建設・不動産・製造・士業など)ほど恩恵が大きく、逆にほとんど内勤の業種では効果が限定されることもあります。
まだ個人名義のままになっている車があるなら、一度顧問税理士に「何台を法人名義にするといくら節税になるか」を試算してもらうことをおすすめします。この5月を逃すと、次に動けるのは来年のシーズンになります。動くなら今です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。