先日、都内で建設業を営む社長から、こんな相談を受けました。

「うちは役員車にガソリンの高級車を3台使っているんですが、EVに替えたほうがいいですか?維持費が変わるくらいだと思って、ずっと後回しにしていたんですよ」

試算してお見せすると、社長は絶句していました。ガソリン車のままでいることで、年間300万円以上のコスト差が生まれていたからです。

EV化の話は「環境への配慮」として語られることが多いのですが、本質は節税です。今回は、その仕組みを数字で丁寧に整理してみます。

取得の瞬間から、すでに100万円の差がある

車を購入するとき、税金がかかることはご存じだと思います。「環境性能割」という税金で、車両価格に応じて1〜3%が課税されます。

電気自動車はこれが非課税です。重量税も免税になります。

1台1,500万円クラスの高級EVと同クラスのガソリン車を比べると、取得時点だけで100万円前後の差が出てきます。「法人で買うからどちらでも同じ」ではありません。取得コストが下がれば、その後の減価償却の計算にも影響してくるからです。

毎年85万円、6年間にわたって効いてくる

法人が1,500万円のEVを購入した場合、耐用年数6年で均等償却すると、年間250万円を損金に計上できます。実効税率が34%だとすれば、年間約85万円の税負担が下がる計算です。

「それはガソリン車でも同じ話では?」と思われるかもしれません。その通りで、減価償却の仕組み自体は同じです。ただ、取得コストが低いEVのほうが、6年間のトータルコストはやはり低くなります。

そして、役員車を3台保有している場合は、この効果が3台分になります。年間255万円、6年間を通算すれば1,530万円という数字が現実になってきます。

グリーン化特例で、翌年の自動車税も75%軽減

もう一つ見逃せないのが「グリーン化特例」です。

EVを購入した翌年度は、自動車税が最大75%軽減されます。適用は1年間ですが、3台あれば3台分の恩恵を受けられます。

取得コストの差、6年間の減価償却効果、そして翌年の自動車税軽減——これらが積み重なることで、年間の差が300万円を超えてくるわけです。

「うちはどのくらい変わる?」は構成次第

ここで一つ正直にお伝えしておきたいことがあります。

上で挙げた数字はあくまで試算です。保有台数・車両価格・会社の規模・実効税率・補助金の有無によって、効果は大きく変わります。「3台全部を一気にEVに換えればいい」という単純な話でもなく、資金繰りや残価の見通し、車の使い方なども含めて総合的に判断する必要があります。

また、EV購入に使える国や自治体の補助金は年度によって制度が変わります。今期動くのか、来期に持ち越すのかによっても、受けられる恩恵が変わることがあります。

「次の更新まで待てばいい」は損をする判断かもしれない

社用車の入れ替えは、決算期とのタイミングが重要です。期末直前の購入では、その年の減価償却はほとんど計上できません。できれば期の前半から、計画的に動くのが理想です。

「今の車がまだ使えるから」と思っているうちに、毎年数百万円の差が積み上がっていくことになります。一度、税理士に「社用車をEVに替えたらどのくらい変わりますか?」と聞いてみてください。具体的な試算を出してもらうだけで、判断のスピードが変わるはずです。

役員車の更新が近いなら、今期中に動くことを強くおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。