先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から、青ざめた様子で電話がかかってきました。「税務調査で、役員社宅と社用車の経費が2,000万円以上まとめて否認されそうです」という内容でした。

詳しく話を聞いてみると、思い当たる節が次々と出てきました。どれも「昔からやっていた」「そういうものだと思っていた」という話でしたが、残念ながらそれは税務の世界では通りません。

今回は、税務調査で実際に指摘される役員社宅・社用車の危険パターンを3つ紹介します。

社宅規程がなければ「全額否認」もあり得る

役員が会社名義の物件に住む役員社宅制度を使うには、会社として社宅規程を整備しておく必要があります。

規程がない状態だと、税務調査官から「これは役員への現物給与では?」と指摘されます。そう認定されれば賞与扱いとなり損金不算入。さらに役員個人にも給与所得として課税され、会社と個人の両方で税負担が増えるという最悪の展開になります。

「規程は後から作ればいい」と思いがちですが、調査が入ってから遡及適用はできません。社宅を使い始める前に規程を整備しておくことが、最低限の前提条件です。

賃貸料相当額の計算が「ズレている」だけで否認される

社宅規程を作っていても、役員が会社に支払う家賃の金額が問題になることがあります。

国税庁の通達では、役員社宅の賃貸料相当額は固定資産税の課税標準額をもとに算定する方式が定められています。この計算式で出た金額が「最低限受け取るべき家賃」のラインです。

「相場より安い家賃に設定すれば節税になる」と誤解している社長も少なくありませんが、通達の計算式を下回ると、その差額が役員給与とみなされて否認されます。感覚値ではなく、必ず計算式に基づいた金額を設定してください。この計算自体はさほど難しくはないのですが、一度も見直していない会社は意外に多いです。

社用車の「業務日誌ゼロ」は致命的

社用車の経費否認は、業務使用の記録がないことが直接の原因になります。

調査官が確認するのは「この車が本当に業務で使われているか」という事実です。ガソリン代・車検費用・駐車場代・減価償却費——これらをすべて損金計上しているのに、走行記録や業務日誌がまったくない、という状況は非常に危険です。

否認されるのは私的使用分だけとは限りません。業務使用の証拠がなければ、社用車関連の経費を全額否認されるケースもあります。日付・目的地・訪問先・用件を記録する走行記録簿を日常的につけておくだけで、このリスクは大幅に下がります。手間は5分もかかりません。

3つが重なると、追徴額は雪だるま式に膨らむ

①社宅規程なし、②賃貸料相当額の計算ミス、③社用車の業務記録なし——この3つが重なったとき、追徴課税のリスクは一気に跳ね上がります。

冒頭の建設会社の社長がまさにそのケースでした。社宅の経費否認・役員給与認定・社用車の経費否認が一度に来て、本税・延滞税・重加算税を合わせると2,000万円を超える計算になっていました。

税務調査が始まってから動いても、できることは非常に限られます。今すぐ3点を確認してみてください。

  • 社宅規程は正式に整備・取締役会決議されているか
  • 賃貸料相当額は国税庁通達の計算式で算定されているか
  • 社用車の走行記録簿・業務日誌を日常的につけているか

どれか一つでも「あやしい」と感じたら、次の決算が確定する前に顧問税理士と一度見直しておくのがおすすめです。指摘を受けてからでは、選択肢が大幅に狭まります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。