先日、年商12億の建設会社を経営するオーナーから相談を受けました。「税務調査が入って、今期計上した経費のうち約7割が否認されそうだと言われた」と、声を震わせながら話してくれたのです。

金額にして3500万円以上。それがそのまま課税対象に加算されると考えると、追加の法人税だけでも数百万円を超えます。しかも、これで終わりではありませんでした。

否認が確定したとき、何が起きるか

経費として計上していた支出が否認されると、その金額は「経費ではなかった」として法人所得に戻されます。そこに法人税が課されるのはもちろんですが、役員が私的に使用したとみなされた場合は、役員給与として処理され直します。

ここが怖いところです。法人税と所得税がダブルで追加課税されるのです。年収1000万円を超えるオーナー社長なら、所得税率は33〜45%にのぼります。同じ経費否認でも、サラリーマン社員とは比べ物にならない痛みになります。

さらに、故意や仮装が認められれば**重加算税35%**が本税に上乗せされます。追徴本税が1000万円なら、さらに350万円が加算される計算です。冒頭の社長のケースでは、最終的な追加負担が数千万円規模になりかねない状況でした。

特に狙われる経費ベスト3

税務調査官が重点的に目を向ける経費があります。経験上、以下の3つは高確率でチェックされます。

役員社宅は筆頭です。会社名義で借りた物件を社長が使用しているケースで、「業務用スペースがどこか」「実際に何割を業務に使っているか」を記録していないと、全額が否認されるリスクがあります。

高級外車も同様です。会社名義のBMWやメルセデスで、業務使用割合の記録がなければ「実質的には社長の趣味の車」と判断されます。取引先への訪問記録、走行距離ログ、訪問目的のメモ——こういった証拠が積み重なってはじめて「業務使用」と認められます。

顧問料・コンサルティング料も要注意です。月50万〜100万円を超える顧問契約が増えていますが、契約内容・成果物・打ち合わせ記録が残っていないと、「実態のない支払い」として否認されることがあります。

否認される原因は、ほぼ3つだけ

高額経費が否認される理由を突き詰めると、ほとんどのケースで共通のパターンがあります。

まず証憑の不備。領収書・請求書・契約書が存在しない、または日付・金額・宛名が不完全なケースです。「捨ててしまった」「もらっていない」は通用しません。

次に業務目的の不明確さ。何のためにいくら支出したか説明できない経費は認められません。「接待費」と記帳してあっても、誰と・どこで・何のために、という記録がなければ否認対象になります。

そして私的費用の混入。これが最も多い原因です。プライベートの旅行を「出張」にする、家族の保険料を会社で払う、子どもの学費を研修費に計上する——よくある話ですが、発覚すると悪質とみなされ、重加算税の対象になります。

今すぐできる防衛策は2つだけ

難しいことは何もありません。ポイントは2つに絞られます。

証憑を整備すること。取引のたびに領収書や契約書を保管し、クラウド会計ソフトに取り込む習慣をつけることです。これだけで証憑不備のリスクはほぼゼロになります。

業務目的を記録すること。経費精算時に「誰と・何のために・どんな成果があったか」を一行でいいので残しておく。後から思い出して書くのでは間に合わないこともあるので、使った当日に記録するのが鉄則です。高額な支出ほど詳しく書いておくことを意識してください。

年商が大きくなるほど、税務調査は深く、長くなります。今この瞬間、経費の根拠を問われたとき、自信を持って答えられますか?

証憑の整備と業務目的の記録——まだ徹底できていないなら、今期中に仕組みとして整えておくことを強くおすすめします。個別の対策については、担当の税理士に相談してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。