先日、年商12億円の製造業を営む社長から、こんな連絡が届きました。
「顧問税理士から『リースの件、急いで判断してください』と言われたんですが、そんなに急ぐ話なんですか?」
この質問、いまとても重要なタイミングを示しています。2026年度の税制改正で、これまで多くの高収益企業が活用してきた「オペレーティングリース節税」に、大幅な見直しが入る可能性があるからです。
航空機・船舶に出資して1億円の損金をつくる仕組み
オペレーティングリースとは、航空機や船舶などの実物資産に複数の投資家が共同出資し、その資産をリースに出す仕組みです。出資した年に資産価値の大部分を「損金」として計上できるため、高収益企業にとっては非常に強力な節税ツールとして機能してきました。
たとえば年商10億円を超える黒字企業が1億円を出資すれば、初年度にその大部分を損金として落とせます。法人実効税率を34%で計算すると、1億円 × 34% = 約3,400万円の節税効果です。これだけの金額を合法的に手元に残せるスキームは、そう多くありません。
2026年度改正で何が変わるのか
問題は、この仕組みがそのまま使えなくなる可能性が出てきたことです。
2026年度の税制改正の議論の中で、航空機・船舶を活用したオペレーティングリースへの「過大な損金算入の是正」が検討されています。改正内容の詳細はまだ確定していない部分もありますが、現行ルールでの大規模な損金計上は、今年が最後になるかもしれません。
特に影響を受けるのは、年商5億〜10億円以上の安定黒字企業です。毎年しっかり利益を出しているからこそ節税ニーズも高く、そういった企業にとってこのスキームは「決算対策の切り札」として機能してきました。
「1ヶ月の遅れ」が億単位の差になる
この手の節税スキームで怖いのは、「気づいたときにはもう締め切っていた」というパターンです。
オペレーティングリースの募集には締め切りがあります。航空会社や船会社のスケジュールに合わせてファンドが組成されるため、「決算が近づいたから今から申し込む」という動き方ができないことも多い。さらに今期中に損金算入するためには、決算期前に出資・契約が完了している必要があります。
動き出しが1ヶ月遅れるだけで、今期の節税機会をまるごと逃すことになります。3,400万円を翌年以降に先送りするのは、実質的には「3,400万円分の税金を余分に払う」のと同じです。
改正前の今が、ギリギリのタイミング
現時点では、改正前の現行ルールに基づいた案件がまだ出ています。ただ業界では「今年の下期以降は急速に選択肢が絞られる」という見方もあります。
焦りを煽るつもりはありませんが、判断できる選択肢があるうちに情報収集を始めるのが賢明です。まずは以下の3点を今月中に確認してみてください。
- 今期の納税見込み額を税理士と確認する
- オペレーティングリースの対象となる出資規模を把握する
- 信頼できる税理士・アドバイザーを通じて現在の案件状況を確認する
この3ステップを動き出せるかどうかが、年間の税負担を大きく左右します。
「知らなかった」では取り返せない
税制改正は、知っている人と知らない人で結果が大きく変わります。「顧問税理士が何も言ってこないから大丈夫だろう」と思っていても、税理士によっては投資系スキームに積極的でないケースもあります。自分から一言確認することが必要な場合もあります。
年商10億円を超える社長であれば、今すぐ顧問税理士に「オペレーティングリース、今期どうですか?」と聞いてみてください。その一言が、3,400万円を守るかどうかの分かれ目になるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。