先日、都内に自社ビルと倉庫を2棟持つある社長から、こんな話を聞きました。
「固定資産税の納税通知書、毎年来るたびに『高いな』と思いながら払ってたんです。でも税理士の先生に言われて初めて、評価額に疑問を持ちました」
結果として、その社長は市区町村に評価の誤りを指摘し、過去3年分の固定資産税の一部が還付されることになりました。金額にして230万円を超えていました。
固定資産税は「自動的に正しい」わけではない
固定資産税は、市区町村が土地・建物を評価し、その評価額をもとに税額を決める仕組みです。毎年4月ごろに納税通知書が届くので、「役所が計算しているなら正確だろう」と思って疑わない方がほとんどだと思います。
ところが実際には、評価の段階でミスが起きることがあります。代表的なのは2つのパターンです。
ひとつは地積(土地の面積)の測量ミス。登記上の面積と実際の面積がずれているケースで、特に古い土地では起きやすい問題です。面積が多く計上されていれば、その分だけ多く課税されていることになります。
もうひとつは用途の誤分類。たとえば工場の倉庫部分が住宅扱いされていたり、逆に住宅用地が商業地として評価されていたりするケースです。用途によって適用される評価基準が変わるため、誤分類は税額に直結します。
「縦覧期間」に課税台帳を確認する
固定資産税に違和感を覚えたとき、最初にやるべきことは課税台帳の確認です。
毎年4月1日から始まる縦覧期間(通常4月1日〜20日前後、自治体によって異なる)に、市区町村の窓口で「固定資産課税台帳」を閲覧できます。自分の土地や建物の評価額、地積、用途分類などを直接確認できる期間です。
この縦覧期間は、納税者が評価の誤りを発見するための事実上唯一のタイミングです。普段は非公開の情報が開示される、年に一度の機会といえます。
不動産を複数持っている社長は、毎年この時期にカレンダーへ入れておくだけでも、過払いのリスクを大幅に減らせます。「4月の頭に縦覧へ行く」という習慣は、それだけで数百万円を守る行動になり得ます。
審査申出の期限は「3ヶ月」——この期限だけは覚えておく
縦覧期間中に評価内容を確認し、「これはおかしい」と感じたら、固定資産評価審査委員会への審査申出という手続きを取ることができます。
重要なのは期限です。審査申出は、縦覧期間の初日(4月1日)から3ヶ月以内に行う必要があります。この期間を過ぎると、原則として行政不服申立てで争うことができなくなります。
「来年でいいや」では通用しないのが、この制度の怖いところです。評価の誤りに気づいていても、期限を逃せばその年の評価は確定してしまいます。申出書類は市区町村の窓口またはウェブサイトで入手でき、どの部分がどう誤っているかを具体的に記載し、根拠となる資料(測量図、建物図面など)を添付するのが基本的な流れです。
誤りが認められれば過去分も還付される
審査申出が認められ、評価の誤りが確定した場合、過去に払いすぎた税額は還付の対象になります。
仮に毎年100万円多く払っていた場合、3年分なら300万円、5年分なら500万円規模の話になります。もちろん全額が戻るケースばかりではありませんが、一部でも取り戻せるなら動かない手はありません。
また、評価誤りを指摘しなくても、次の評価替え(3年ごと)の際に修正されることはありますが、それは「偶然修正された」にすぎず、過払い分の返金には至らないことも多いです。自分から声を上げることが、結果として資産を守ることにつながります。
税理士・不動産鑑定士と連携する
実際に審査申出を進める場合、税理士や不動産鑑定士のサポートを受けることをおすすめします。
特に不動産鑑定士は、市区町村の評価額が適正かどうかを専門的に判断できます。「何となく高い気がする」という感覚を、数字で証明できる形にしてくれます。税理士は申出書類の整備や、審査申出後の手続きを一緒に進めてくれます。
専門家費用がかかっても、取り戻せる金額が大きければ費用対効果は十分に見合います。「動くのが面倒」で毎年100万円払い続けるより、一度プロに相談するほうが、長い目で見れば圧倒的に得です。
今年の縦覧期間がすでに終わっていても、来年の4月に向けて今から準備することはできます。手元の納税通知書を引っ張り出して、評価額に違和感がないか一度確認してみてください。「払いすぎかもしれない」という直感は、意外と正しいことがあります。来年の縦覧期間には、ぜひ課税台帳を手にとってみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。