先日、決算が3ヶ月後に迫った建設会社の社長から、こんな相談を受けました。

「利益が思ったより出すぎてしまって、何か手を打てないか」と。

話を聞いていくと、医療保険には加入しているものの、個人で契約していて会社の経費には一切なっていないとのこと。これは、かなりもったいない状況です。

法人名義でがん保険や医療保険に加入すると、要件を満たせば保険料を**全額損金(経費)**として計上できます。年間保険料が300万円であれば、実効税率33%として単純計算で約100万円の節税になります。社長個人の保障を確保しながら、会社の税負担も下げられる、一石二鳥のスキームです。

「全額損金タイプ」かどうかが分かれ道

法人保険の損金算入には、商品の設計が大きく影響します。すべての保険料が経費になるわけではありません。

キーワードは「全額損金タイプ」の商品設計です。保険期間や解約返戻率によって、損金に算入できる割合が変わります。解約返戻率が低めに設定された「掛け捨て型」に近い設計であれば、保険料の全額を損金として計上できるケースがあります。

一方、返戻率が高い貯蓄性の強い商品は、保険料の一部しか損金にならないことも多い。「なんとなく保険に入っておけば節税になる」という時代は、すでに終わっています。

短期払い×高額保障で効果を最大化する

節税効果を高めたいなら、短期払い・高額保障の組み合わせが基本的な考え方です。

保険料の払込期間を短く設定することで、毎年計上できる経費の金額が大きくなります。たとえば60歳満了を80歳満了に変えるだけで、年間の損金額はぐっと下がります。逆に払込期間を10年や15年に絞れば、同じ保障でも毎年の経費計上額を増やすことが可能です。

さらに、保険金額(保障額)を大きく設定することで、保険料そのものを増やしながら経費のボリュームを作れます。社長の万が一のリスクに備えながら、決算前の利益調整にも使えるという発想です。

2019年の通達改正で「設計が命」になった

ここで必ず押さえておきたいのが、2019年に行われた法人保険に関する国税庁の通達改正です。

それ以前は、いわゆる「節税保険」として設計された商品が市場に大量に出回っていました。返戻率を高く設定しながら保険料を全額損金にできる商品が横行し、国税庁がメスを入れたのがこの改正です。

改正後は、解約返戻率のピーク値によって損金算入の割合が4段階に区分されるようになりました。

  • 返戻率が85%超 → 保険料の一部しか損金にならない
  • 返戻率が70%超85%以下 → 保険料の約60%が損金
  • 返戻率が50%超70%以下 → 保険料の約40%が損金
  • 返戻率が50%以下 → 保険料の全額が損金

「全額損金」を狙うなら、返戻率が50%以下の商品を選ぶ必要があります。保障重視の掛け捨て型がん保険や医療保険がここに該当しやすいのですが、商品によって細かい設計が異なります。同じ「がん保険」という名前でも、扱う保険会社や払込期間によって損金割合は変わります。

「保険料が経費になる=丸儲け」ではない

一点、誤解しないでほしいことがあります。

損金算入できるからといって、保険料が0円になるわけではありません。あくまで「利益が圧縮されて、その分の税金を後ろ倒し・または軽減できる」という仕組みです。解約時に返戻金が戻ってくれば、そのタイミングで益金(収益)が発生します。

節税効果を最大限に得るためには、「いつ解約するか」「解約返戻金をどう使うか」まで含めた出口戦略が不可欠です。役員退職金と組み合わせて解約益を相殺するのがよく使われる手法ですが、退職のタイミングとのズレが生じると税負担が思わぬ形で発生することもあります。

今すぐ確認してほしいこと

社長が個人で医療保険やがん保険に入っているなら、まずその契約が「個人契約か法人契約か」を確認してください。個人契約のままでは会社の経費にはなりません。

法人契約への切り替えや新規加入を検討する際は、保険代理店だけでなく、必ず顧問税理士も交えて設計を確認することをおすすめします。保険会社の担当者は税務の専門家ではないため、「全額損金になります」という言葉を鵜呑みにするのはリスクがあります。

決算が近い社長こそ、今すぐ動くべきタイミングです。保険の加入には審査期間が必要なので、決算の2〜3ヶ月前には動き始めるのが理想です。今期の節税に間に合わせたいなら、来月には動き出してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。