先日、年商10億円ほどの製造業を営む社長からこんな相談を受けました。

「税理士に言われて、節税目的でワンルームマンションを買ったんです。でも最近、同業の社長が『リースの方が全然いい』と言っていて……自分は損してるんですかね?」

この質問、実はとても本質を突いています。不動産もリースも「節税になる」という点では同じ。でも、そのスピード・規模・手元キャッシュへの影響は、まったく別物なんです。

不動産節税の「本当のスピード」を知っていますか?

不動産投資による節税の仕組みは、減価償却です。建物部分を法定耐用年数にしたがって毎年少しずつ費用として計上し、それが損金になることで課税所得を圧縮します。

たとえば1億円の物件を購入した場合、建物の割合にもよりますが、年間に損金算入できる額は概ね300〜400万円程度です。つまり、1億円を「使い切る」までに30年以上かかる計算になります。

もちろん、賃料収入や資産としての価値もあるので、不動産投資がまるごとダメだという話ではありません。ただ、「節税のスピード」という観点に絞れば、これはかなりゆっくりしたペースだと言わざるを得ません。

航空機オペレーティングリースは「初年度勝負」

一方、近年、規模の大きい法人の節税手法として注目されているのが、航空機オペレーティングリースです。

仕組みをざっくり言うと、航空会社に機体を貸し出すビジネスに出資する形で参加するものです。出資した資金は、初年度から大きく損金算入できるのが最大の特徴で、出資額の80〜100%程度が1〜2年で損金化されるケースも珍しくありません。

先ほどの社長のケースで試算してみましょう。1億円を出資した場合、実効税率を33%と仮定すると、税負担の軽減額は最大で約3,000万円にのぼります。不動産なら30年以上かけて達成する節税効果を、わずか2〜3年で実現できるイメージです。

「3000万円の差」はどこから生まれるのか

ここで少し整理してみます。

同じ1億円を使った場合の比較です。

  • 不動産:年300〜400万円の損金 × 30年超 = 合計節税額は同水準になるが、効果が出るまでに数十年かかる
  • 航空機リース:初年度から1億円近くが損金化 = 2〜3年で約3,000万円の税負担が軽減

数字だけ見ると、リースが圧倒的に有利に映ります。ただし、ここで見落としてはいけない視点があります。それが「出口戦略」です。

「何のための節税か」を先に決める

オペレーティングリースは、契約終了時(多くは5〜10年後)に機体が売却され、出資者に利益が分配されます。このとき、過去に損金算入した分が「収益」として戻ってきます。いわゆる課税の繰り延べという性質を持っています。

つまり、リースで今の税負担を減らした分、将来に課税が発生するわけです。ここをどう活用するかがポイントで、たとえば「5年後に事業を縮小・承継予定があり、そのタイミングで課税を受ける方が有利」という場面では、リースは非常に合理的な選択になります。

一方、不動産は現物資産として残り続け、長期的な収益やインフレへのヘッジにもなります。売却タイミングを自分でコントロールできる点は、リースにはない強みです。

どちらが正解というより、今の利益の大きさ・将来の事業計画・キャッシュフローの見通し、この3つのバランスで選ぶものだと思っています。

「節税」は手段であって、目的ではない

よく見かけるのが、「とりあえず節税になるから」という理由で不動産を買い続け、気づけば管理コストや空室リスクが重荷になっているケースです。節税の手段が、いつのまにか経営の足かせになっている。

リースにしても同様で、契約期間中は途中解約が難しいため、資金の流動性は下がります。「この資金、5年は動かせなくて大丈夫か」を事前に確認しておくことは必須です。

節税の選択肢を広げることはとても大切ですが、それ以上に「なぜ節税するのか」「浮いた税金をどこに再投資するのか」を先に決めておくことが、経営判断としての節税の本質だと思っています。


今期の利益が大きくなりそうで、節税の手段を探しているのなら、まず顧問税理士に「オペレーティングリースという選択肢についてどう思うか」と聞いてみてください。税理士の得意領域によっては、提案されたことがない方も多いはずです。選択肢を知っているだけで、3,000万円の差が生まれることもあるのですから。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。