先日、年商10億円ほどの建設会社の社長からこんな相談を受けました。
「決算前に1億円の不動産を買って節税しようと思ってるんですが、どう思いますか?」
悪い選択ではありません。ただ、「なぜ不動産なのか」と聞いてみると、「なんとなく持っておけば安心かなと思って」というお答えでした。節税の手段をきちんと比較したことはない、というわけです。
そこで私は、別の選択肢を一緒に検討することをご提案しました。
不動産の節税効果、実は想像より小さい
不動産投資が節税に使えること自体は本当です。ただし、その効果は「初年度にどれだけ損金に落とせるか」で考えると、かなり限定的です。
1億円の物件を買った場合、節税に使えるのは建物部分の減価償却費だけです。土地は減価償却できません。建物の耐用年数にもよりますが、RC造なら年2〜3%程度。つまり初年度に損金算入できるのは、多くても200〜300万円が上限ラインです。
1億円を動かして、節税効果は200〜300万円。悪くはないですが、これが「最善策」かどうかは別の話です。
さらに現実的な問題として、管理費や修繕費、空室リスクも発生します。節税のために買ったはずが、毎月のキャッシュフローがマイナスになる物件も珍しくありません。
オペレーティングリースという選択肢
同じ金額を動かすとして、まったく異なる節税効果が得られるのがオペレーティングリースです。航空機や船舶を対象とした仕組みで、多くの場合1口5,000万円程度からの出資になります。
最大の特徴は、初年度に出資額の70〜80%を損金算入できる点です。5,000万円出資したなら、3,500〜4,000万円が初年度の経費になります。
不動産の初年度損金が200〜300万円だったことを思い出してください。同じ規模の資金を動かしても、損金化できる金額に10倍以上の差が生じることになります。
これが冒頭の社長に見せた数字でした。「えっ、そんなに違うんですか」と目を丸くされていたのが印象的でした。
出口戦略がなければ意味がない
ただし、オペレーティングリースには重要な注意点があります。損金算入したお金は、5〜8年後に益金として戻ってくるという仕組みです。
「先に節税できるけど、後で税金がかかる」と聞いて、二の足を踏む社長もいます。でも、ここで重要なのは「出口をどう設計するか」です。
益金が戻ってくるタイミングに合わせて、役員退職金を支払えば、退職金は損金算入できるので益金を相殺できます。あるいはM&Aで会社を売却するタイミングに合わせる方法もあります。どちらも、事前に計画しておけばこそ機能する戦略です。
逆に言えば、出口戦略なしにオペレーティングリースだけ契約しても、数年後に想定外の税負担が発生するリスクがあります。仕組みとしては優れていますが、設計が不可欠なのです。
「比較しなかった」が最大のミス
節税の話をしていて一番もったいないと感じるのは、「検討したことすらなかった」というケースです。
不動産はわかりやすい。物件という形があるし、なんとなく安心感もある。だからこそ、他の手段と比較しないまま「不動産を買えば節税になる」という思い込みで動いてしまいがちです。
オペレーティングリースは確かに複雑です。スキームの内容によって税務上の取り扱いも変わりますし、契約内容の確認や専門家への相談は必須です。ただ、それを差し引いても、初年度の節税効果という点では不動産の比ではありません。
決算が近づいてきたタイミングで「今期は利益が出そうだ」と気づいた社長に、一度立ち止まって検討してほしい選択肢のひとつです。
判断のポイントを整理すると
不動産が向いているケースとオペレーティングリースが向いているケースは、会社の状況によって異なります。資金の規模、今後の事業計画、オーナーの年齢と引退・承継のタイミング、これらをすべて踏まえた上で判断する必要があります。
「とりあえず不動産」は節税の最適解ではないことが多い。そのことを頭に入れた上で、今期の利益対策を考えてみてください。
決算まで時間があるなら、一度税理士に「他の選択肢と比較したい」と声をかけてみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。