先日、都内で複数の事業会社を経営するオーナー社長からこんな相談を受けました。

「利回り7%の収益物件が出てきた。10億で買えるんだが、法人でそのまま買えばいいよな?」

正直に言います。「そのまま買う」のが一番危険なパターンです。買い方を一つ間違えるだけで、数千万円単位の税負担の差が生まれます。今回は、大型不動産を法人で購入するときに多くのオーナーが踏んでしまうミスを、ワースト3形式でお伝えします。


第3位:フルローンで「とりあえず法人直接購入」

「法人で買えば金利も減価償却も経費になるんでしょ?」という声はよく聞きます。確かにその通りです。しかし、それだけでは節税設計として50点止まりなのです。

問題は自己資金の比率設計にあります。フルローンで10億を調達すると、元本返済は税務上の経費になりません。手元キャッシュは出ていくのに、税金はしっかり課税される「黒字貧乏」状態に陥るリスクがあります。

理想は、借入比率と減価償却年数のバランスを緻密に計算した上で、自己資金をどれだけ入れるかを設計することです。物件の構造(RC・鉄骨・木造)によって法定耐用年数も変わります。たとえばRC造の中古物件であれば、残存耐用年数の計算次第で償却スピードが劇的に変わる場合があります。

ローンを使うことは悪ではありません。ただ、「借りられるだけ借りればOK」という発想が、手元資金を圧迫しながら節税効果も中途半端という最悪の結果を招くのです。


第2位:単体法人でそのまま保有する

「自分の会社で買えばいいじゃないか」というのは自然な発想です。でも、10億規模の不動産を単体法人で保有することには、見えにくいリスクがあります。

まず、事業リスクと不動産リスクが同じ法人に集中します。本業で何かトラブルが起きたとき、不動産ごと巻き込まれる可能性があります。逆も然りで、不動産の瑕疵や訴訟が本業の運転資金に影響する場面も実際に起きています。

ここで登場するのが**SPC(特定目的会社)**という仕組みです。物件ごとに独立した法人を設立し、リスクを分離させる。これだけで、万一の際の損失を最小化できます。

さらに税務上のメリットも大きい。SPCを使えば、物件取得時の減価償却枠をその法人内で最大限に活用しつつ、オーナーグループ全体の課税所得をコントロールしやすくなります。「不動産専業のSPCを複数持つ」という発想は、資産100億を超えるようなオーナーには当たり前のスキームになりつつあります。


第1位:持株会社スキームを組まずに購入する

これが最も致命的なミスです。目先の節税ではなく、10年・20年先の資産承継まで見据えると、持株会社の有無が数億円規模の差を生みます。

持株会社を頂点に置かない場合、収益不動産から生み出されたキャッシュはオーナー個人に還流させるたびに配当課税・役員報酬課税が発生します。最高税率で考えると、手元に残るのは半分以下になることもあります。

さらに恐ろしいのが相続税です。不動産を個人または単体法人で持ち続けると、相続発生時の評価が膨らみやすくなります。特に収益性の高い物件は、路線価評価と実勢価格の乖離が小さく、節税効果が薄れているケースも増えています(2023年以降の国税庁の通達改正も要注意です)。

王道として評価されているのが、持株会社 × SPC × 借入の三層構造です。

  • 持株会社:グループ全体の資金管理とオーナーへの還流を最適化
  • SPC:物件ごとのリスク分離と減価償却の最大化
  • 借入:支払利息の損金算入と相続時の債務控除を活用

この三層を組み合わせることで、日常の法人税・将来の相続税・オーナーへの資金還流効率、すべてに対して手が打てる設計になります。


「急いで買う」より「設計してから買う」

良い物件は確かにスピードが命です。でも、10億規模の案件において、スキームを決める前に契約してしまうことのリスクは計り知れません。一度登記してしまえば、後からSPCを挟んだり持株会社に移したりする際には、不動産取得税や登録免許税が再度かかるケースもあります。

税理士・弁護士・司法書士の三者が連携して設計する体制を作ってから動く。これが大型不動産投資の基本姿勢です。「買ってから相談」では遅いのです。

もし今、10億前後の不動産案件が目の前にあるとしたら、まず専門家チームに声をかけてください。スキーム設計の費用は、節税効果の前では誤差の範囲です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。