先日、ある経営者からこんな相談を受けました。

「3000万円の絵画を個人で買おうと思っているんですが、何か節税になる方法はありますか?」

思わず「それ、法人で買いましたか?」と聞き返したくなる一言でした。個人で購入してしまうと、手元に資産は残るものの税金面では何のメリットもありません。でも法人で買えば、話はまったく変わってきます。

高級品を「個人で買う」のは、実はもったいない

美術品、ワイン、クラシックカー——こうした「趣味性の高いもの」は、どうしても個人の買い物として捉えがちです。でも会社を持っているなら、法人名義で購入することで、正当に経費として計上できるケースがあります。

これは抜け穴でも裏技でもなく、税務上きちんと認められた仕組みです。要は「会社の資産として減価償却する」という考え方です。

100万円を境に、扱いが変わる

美術品の減価償却については、国税庁の通達で一定のルールが定められています。ざっくりまとめると、こうなります。

取得価額が100万円未満の美術品は、「時の経過とともに価値が減少するもの」と見なされ、即時償却(取得した年に全額経費化)が可能です。

一方、100万円以上の美術品は原則として非償却資産として扱われますが、「一般的に時の経過により価値が減少することが明らかなもの」であれば、耐用年数8年で減価償却できます。

ここで冒頭の3000万円の絵画に戻りましょう。仮に8年均等償却するとなると、年間375万円を経費に計上できます。実効税率を33%として計算すると、8年間で合計約990万円の税負担が軽くなる計算です。

しかも絵画は手元に残る「資産」です。将来的に売却すれば売却益も法人内で管理できますし、相続や事業承継の文脈でも活用の幅が広がります。現金で税金を払って消えてしまうのと、資産として手元に残るのでは、まったく意味合いが違います。

ワイン・クラシックカーはどう扱う?

ワインについては、保存状態によって価値が変動するという性質から、適切な管理と事業目的(接待用など)があれば経費計上を検討できる場合があります。ただし、個人的な消費と区別できる記録を残しておくことが重要です。

クラシックカーはやや条件が厳しくなります。「趣味で乗っている」だけでは認められません。実際に業務で使用している実態——たとえば代表者の営業車として走行記録がある、社名の入ったラッピングがされているなど——が求められます。

また、クラシックカーは希少性から価値が上昇するケースも多く、「時の経過で価値が減少する」という減価償却の前提と相反する面もあります。ここは個別の状況によって判断が分かれるところです。

落とし穴は「価値が減少するかどうか」の判断

減価償却が認められる大前提は、「時間とともに価値が下がる資産である」ということです。

有名作家の作品や骨董品のように、むしろ時間が経つほど価値が上がるものは、税務署から「これは減価償却資産ではない」と否認されるリスクがあります。購入前に、その美術品が減価償却の対象として認められるかどうかを確認しておくことが不可欠です。

また、法人購入した資産を社長が自宅に飾っている、私的に使用しているといった状況は、「会社の資産」として認められなくなる可能性があります。事務所や応接室に飾るなど、法人として使用している実態を作ることが大切です。

今期の決算前に、一度棚卸しを

「個人で持っているもの、実は法人に移せたかも……」と感じた方は少なくないはずです。既に個人で購入したものを法人に売却(現物出資)する方法もありますが、時価評価など別の論点が生じます。

大切なのは、次に高額な資産を取得するとき、最初から法人名義を検討するという視点を持っておくことです。美術品やカーコレクションを資産防衛の観点から見直すと、意外な節税の入り口になることがあります。

決算が近い方は、今期中に税理士と「法人で取得できる資産はないか」を一度話し合ってみてください。思わぬところに選択肢が眠っているかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。