先日、年商10億円規模の運送会社の社長から、こんな相談を受けました。
「数年前にオペレーティングリースに1億円出資して、当時はかなり節税できた。でも今年、満期が近づいてきて税理士に試算してもらったら、想定より3000万円以上も益金が増えそうだって言われて……」
最初の節税効果に満足して、その後の為替の動きをほとんどチェックしていなかったそうです。これ、実は今かなり多くの社長が直面しているリアルな問題なんです。
オペレーティングリースの「おいしい部分」だけ知っていませんか?
オペレーティングリースとは、簡単に言うと複数の法人が共同で航空機や船舶を購入し、航空会社や海運会社に貸し出すスキームです。航空機などは減価償却が大きいため、初年度に多額の損失を計上できるのが最大の魅力です。
1億円を出資した場合、初年度に約7000万円を損金算入できるケースも珍しくありません。黒字が出やすい決算期の直前に組み込むことで、法人税をぐっと圧縮できる、社長に人気の節税スキームです。
ただし、「入口の節税効果」だけを見て飛びついてしまうと、出口でしっぺ返しを食らうことがあります。その最大の要因が「為替」です。
円安が直撃する「出口の益金」問題
オペレーティングリースは、基本的に米ドル建てで組まれています。航空機の売買も、リース料の回収も、すべてドルベースで動いています。
問題は満期または中途解約のタイミングです。リースが終わると、貸していた航空機を売却して出資者に資金が戻ってきます。このとき、戻ってくる金額は「ドル建ての売却益を、そのときの為替レートで円換算した金額」になります。
出資した当時が1ドル=110円で、満期を迎えたときに1ドル=155円になっていたとしましょう。ドル建ての回収額が変わらなくても、円換算すると約40%も膨らみます。これが「想定外の益金」として課税されてしまうわけです。
1億円の出資で数千万円規模の益金増加が起きることも十分あり得る、それが今の円安局面の怖さです。
「円安は全部悪」ではない。出資前なら逆にチャンス
ただし、円安が常に悪いわけではありません。視点を変えると、出資する前の段階、つまり「これからリースに入ろうとしている社長」にとっては、円高局面こそ狙い目です。
ドル建ての資産を円で購入するわけですから、円高のときに出資すれば、同じドル額の資産をより少ない円で取得できます。実質的な取得コストが下がり、将来の利回り改善にもつながります。
「節税のタイミング」と「為替のタイミング」を組み合わせて考えることが、賢いリース活用の肝と言えます。
今すぐ確認すべき3つのポイント
すでにオペレーティングリースに出資している社長は、今すぐ以下の3点を確認してください。
まず、為替ヘッジの有無です。契約時にヘッジオプションをつけているかどうかで、円安リスクの影響が大きく変わります。ヘッジコストはかかりますが、出口の予測精度が格段に上がります。
次に、契約通貨と回収スケジュールです。満期がいつで、ドルと円のレートがどう動いたら益金がどう変わるか、シミュレーションを税理士と一緒に確認しておくことが重要です。
そして、出口戦略の再設計です。満期のタイミングをずらせる商品もあります。円安が続いているなら、少し待つことで課税額が変わることもあります。
節税は「入口」だけでなく「出口」まで設計する
オペレーティングリースは、正しく使えば確かに強力な節税ツールです。しかし、「入口で損金を作った」で終わりにしてしまうと、出口で想定外の税負担に直面するリスクがあります。
特にここ数年の為替変動は激しく、1〜2年前の試算が今や全く違う数字になっているケースも多い。決算期が近い社長は、今すぐ顧問税理士と最新の為替レートで再試算することを強くおすすめします。
オペレーティングリースを検討している社長も、「節税額がいくらか」だけでなく「満期時にいくら戻るか、そのとき円がいくらか」まで試算してから判断するのが正解です。
為替は誰にもコントロールできませんが、リスクを把握した上で動くのと、知らずに動くのでは結果が大きく変わってきます。まだ満期シミュレーションをしていないなら、今月中に税理士に依頼してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。