先日、ある経営者からこんな相談を受けました。「税理士に勧められてオペレーティングリースに出資したんですが、なんか思ったより割高に感じて…」と。話を聞いていくうちに、為替のことをまったく考慮せずに出資していたことがわかりました。節税額にして数千万円の話なのに、レートを一切確認していなかったんです。

これ、実は珍しい話ではありません。オペレーティングリースは効果的な節税スキームですが、為替という「見えないコスト」を無視すると、思わぬ損をすることがあります。今日はその仕組みをわかりやすくお伝えします。

オペレーティングリースが節税になる仕組み

まずざっくりおさらいしておきましょう。オペレーティングリースとは、航空機や船舶などの大型資産を、海外のSPC(特別目的会社)を通じて複数の投資家が共同購入し、リース収益を得ながら減価償却による損失を計上するスキームです。

初期の数年間は大きな損金が発生するため、法人税の課税所得を大幅に圧縮できます。年商数億〜数十億円規模の中堅企業にとって、決算前の有力な節税手段として広く使われています。ただ、ここに一つ大きな落とし穴があります。出資金が「ドル建て」であることです。

円安で節税コストが1,300万円変わる現実

オペレーティングリースへの出資は、ほとんどのケースで米ドル建てで行われます。つまり、出資するタイミングの為替レートによって、円ベースの実質コストが大きく変わるんです。

具体的に数字で見てみましょう。たとえば1億円規模の節税スキームを組む場合、1ドル=130円のときと150円のときとでは、同じドル金額でも円換算で約1,300万円以上の差が出ます。節税効果は同じなのに、払う円の金額だけが膨らんでいる状態です。

円安が進んだ今の局面では、割高な状態で出資していることになります。節税できる金額は変わらないのに、出資コストだけが上がっているわけですから、実質的なリターンは悪化しています。

賢い社長は「円高局面」を狙って出資する

為替を理解している経営者は、円高のタイミングを見計らってオペレーティングリースに出資します。同じ節税効果を得るために支払う円が少なくて済むからです。

逆に、為替を気にせずに飛びついてしまう社長は、円安のピーク付近で出資し、実質コストを余分に払ってしまっています。税理士から節税の話を持ちかけられると、「今期の税金を減らしたい」という気持ちが先走ってしまうのはよくわかります。でも、少し立ち止まって為替レートを確認するだけで、数百万〜数千万円の差になることがあるんです。

満期回収時にも為替リスクがある

もう一つ忘れてはいけないのが、満期時の回収です。オペレーティングリースは数年後に資産を売却して出資金が戻ってきますが、この回収もドル建てです。

出資時は円安で割高だったとしても、満期時に円高に転換していれば、円換算での回収額がさらに目減りします。たとえば1ドル150円で出資して、満期時に1ドル120円になっていたとすると、受け取る円の金額は大幅に減ります。節税で浮かせた分を、為替差損で取り戻されてしまうケースも実際にあります。

だからこそ、出資時点の節税効果だけを見て判断するのは危険です。満期までの為替シナリオも含めて、トータルの損益を試算しておく必要があります。

為替シナリオは税理士と必ずセットで考える

オペレーティングリースは適切に使えば強力な節税ツールです。ただ、為替という変数が絡む以上、通常の節税よりも一段上の検討が必要になります。

チェックしておきたいポイントを整理すると、こんな観点があります。

  • 出資時の為替レートは円高・円安どちらの局面か
  • 満期までの為替変動リスクをどう見積もるか
  • 円安が続いた場合・円高に戻った場合それぞれの損益シミュレーション
  • 節税効果と為替コストを差し引いたネットの手取りはいくらか

これらを自分だけで判断するのはなかなか難しい。為替にも精通した税理士と一緒に、複数のシナリオを試算したうえで意思決定することが大切です。

節税は「タイミング」も実力のうち

節税スキームを知っているかどうかと、それを最適なタイミングで使えるかどうかは、別の話です。オペレーティングリースは「知っている社長」が使うイメージがありますが、さらにその先の「為替まで読んで動ける社長」が本当の意味で得をしています。

今が円安局面であるなら、焦って飛びつく必要はありません。為替の動向を注視しながら、円高に振れたタイミングで出資できるよう準備しておくのが賢いやり方です。税金を減らしたい気持ちはわかりますが、コストを余分に払って節税するのは本末転倒です。

もしオペレーティングリースへの出資を検討しているなら、まず担当税理士に「為替シナリオ込みのシミュレーションを見せてほしい」と伝えてみてください。それができない税理士なら、この分野に強い専門家に相談することも選択肢に入れておくといいでしょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。