先日、製造業を営むある社長からこんな相談を受けました。「タイの子会社が好調で、今年は大きな配当を日本に送金したんですが、なんか税金を二回取られている気がするんですよね」と。

感覚は正しかったです。実際に試算してみると、現地で源泉税を引かれた上に日本でも法人税がかかっていて、合計の税負担率が50%近くになっていたんです。これは、正直かなりもったいない状態でした。

海外配当には「二重の壁」がある

海外子会社から配当を受け取るとき、まず現地国で源泉税が差し引かれます。国によって税率は異なりますが、だいたい20〜30%の範囲で課税されるケースが多いです。

そしてその配当金が日本の親会社の口座に入ると、今度は日本の法人税の対象にもなります。つまり、同じ利益に対して「現地でも」「日本でも」課税される、これが二重課税の正体です。

タイやベトナム、インドネシアなど東南アジアに製造拠点を持つ企業は特にこの問題に直面しやすく、グループ全体で見たときの実効税率が想定より大幅に高くなっているケースは珍しくありません。

外国税額控除という「取り戻す仕組み」

この二重課税を解消するために用意されているのが、外国税額控除という制度です。簡単に言うと、海外で払った税金を日本の法人税から直接差し引ける仕組みです。

「控除」と聞くと「課税所得を減らすもの」をイメージしますが、外国税額控除は違います。税額そのものから引けるので、節税効果がダイレクトに出ます。たとえば海外で1,000万円の源泉税を払っていれば、要件を満たせばその分をそのまま日本の法人税から引けるわけです。

これが正しく機能すれば、年間で数千万円単位の税負担が変わることも十分あり得ます。

「直接控除」と「間接控除」、どちらが使える?

外国税額控除には大きく2つの種類があります。

ひとつは直接控除。これは日本の親会社が直接支払った外国税、たとえば配当を受け取る際に源泉徴収された税金がこれに当たります。比較的わかりやすく、多くの企業が活用できる可能性があります。

もうひとつが間接控除です。これは海外子会社が現地で支払った法人税の一部を、親会社の外国税額控除に取り込める制度です。ただし、こちらは適用要件がかなり厳格で、持株比率が25%以上であること、かつ6ヶ月以上継続して保有していることなど、細かい条件をクリアする必要があります。

要件を満たせば節税インパクトは大きいですが、少しでも条件がずれると適用できないので、スキームの設計と確認が欠かせません。

控除には「上限」があることも忘れずに

外国税額控除には、控除できる金額に上限が設けられています。「控除限度額」と呼ばれるもので、日本の法人税額に一定の計算式を掛けて算出します。

海外での税率が高すぎる場合や、日本側の所得が少ない場合は、払った外国税の全額を控除しきれないケースもあります。使い切れなかった分は翌年以降に繰り越すことができますが、上手に活用するには中期的な資金計画と合わせて考える必要があります。

また、外国税額控除と「受取配当等の益金不算入制度」は、一定の場合に重複適用できないという論点もあります。どちらを優先するかで税負担が変わるため、ここは専門家と一緒にシミュレーションしておくべきポイントです。

「とりあえず申告している」では損をしている

多くの企業で、外国税額控除の申告は一応やっているけれど、最適化できているかどうかは検証していない、というケースをよく見かけます。経理担当者が「去年と同じように処理した」だけで、実は適用漏れがあったり、間接控除の要件を満たしているのに使っていなかったりするんです。

海外子会社を持つなら、少なくとも2〜3年に一度はグループ全体の税務スキームを見直すことをおすすめします。事業の規模や持株比率が変われば、使える制度も変わってきます。

まだ外国税額控除のスキームを整理できていないなら、今期の決算前に一度、国際税務に詳しい税理士に確認してみてください。思わぬところで取り戻せる税金が眠っているかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。