先日、創業20年の建設会社の社長からこんな連絡が届きました。「リースが満了するのに、税理士から『今年は退職金が出せない』と言われた。これって普通ですか?」

普通ではありません。むしろ、かなりまずい状況です。

オペレーティングリースは「組んだとき」に注目されがちですが、本当の節税効果が問われるのは満了を迎える「出口」です。そしてこの出口で盛大に失敗している社長が、想像以上に多いのが実情です。今日は、よくある失敗パターンを3つに絞って整理します。

第3位:リース満了と退職金のタイミングがズレている

オペレーティングリースは満了時に「一括益」が発生します。これは課税所得を一気に押し上げるため、何も手を打たなければそのまま高い税率で課税されてしまいます。

この一括益を打ち消すために使いたいのが退職金です。退職金は全額損金算入できるため、大きな所得と相殺するには最強の手段です。ところが実際には、「リース満了が今期なのに退職金の支給は来期以降」というタイミングのズレが起きていることがあります。

損益は同じ事業年度内でしか通算できません。満了年度と退職金の支給年度がズレると、それぞれの年度で税負担が発生し、本来ゼロにできたはずの税金が分散して課税されてしまいます。リースの終了予定日と退職金の支給時期は、必ず同じ期に揃えて設計することが大前提です。

第2位:退職金の金額設計が甘い

「退職金は用意している」という社長でも、その金額がリース戻り益に対して小さすぎるケースが非常に多いです。

退職金は「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」で計算するのが税務上の目安です。この計算式に当てはめると、社長の属性によって支給できる上限額が決まってきます。

たとえば、リース満了で5,000万円の一括益が出るとします。ところが退職金として損金算入できる金額が2,000万円しか設計されていなかった場合、残りの3,000万円には高い税率がそのままかかってしまいます。半分以上の益が「相殺しきれずに課税される」という事態です。

リースを組む段階で「満了時にどれだけの益が出るか」を試算し、それを打ち消せる規模の退職金を逆算して設計する必要があります。報酬月額を意識的に設定しておくことも、この段階では重要な論点になります。

第1位:そもそも出口を決めずにリースを組んでいる

これが最も致命的なミスです。「節税になると聞いたから」「利益が出すぎているから」という理由でリースを組んだものの、5年後・7年後に誰がどういう形で退職するのかを一切考えていないケースです。

オペレーティングリースは「組んだ時点では損金が出る」という仕組みです。裏を返せば、満了時には必ず益が出ます。その益を相殺する手段が何もなければ、節税効果はほぼゼロ、あるいはマイナスにすらなりかねません。

理想的なスキームは逆算式です。「5年後に代表が退職する予定 → その時点で退職金として○千万円を支給できる → リース戻り益がそれと同規模になるように組成する」という順番で考えます。出口から設計しないリースは、単なる課税の先送りで終わります。

また、退職する人物が代表一人に限らず、複数の役員を組み合わせてスキームを設計する場合もあります。人事戦略・事業承継の計画と一体で考える必要があるため、専門家抜きで判断するのは非常にリスクが高いです。

リースを「検討中」の社長へ

今まさにオペレーティングリースの提案を受けているなら、最初に確認すべきは「利回り」でも「組成金額」でもなく、「出口をどう設計するか」です。

満了時に誰が退職できるか、退職金をいくら出せるか、そのために今から報酬月額をどう設定するか。この3点がクリアになってから契約するのが正しい順序です。

リース提案を受けた際に「出口の話が出なかった」なら、それ自体が黄色信号です。提案者が節税スキームの全体像を設計できているかどうかを見極めるひとつの基準にしてください。

すでにリースを組んでいて満了まで2〜3年以内という社長は、今すぐ顧問税理士とシミュレーションをやり直すことをおすすめします。まだ間に合うタイミングがあるうちに、退職金の設計を整えておきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。