先日、年商10億円の建設会社を経営するAさんから相談を受けました。「毎年1億円をオペレーティングリースに入れているので、節税はバッチリです」と、満足そうに話していたのですが——話を聞き進めると、少しヒヤリとしました。

Aさんの契約は5年後に満期を迎えます。その時点で何が起きるか、まだ十分に理解していなかったのです。

オペレーティングリースの「本当の正体」

オペレーティングリースとは、航空機・船舶・コンテナなどの高額資産をリース会社と共同で保有・運用する仕組みです。出資した金額が毎年「リース料」として損金(経費)に算入されるため、利益が大きく出た年の節税手段として多くの経営者に活用されています。

ただ、ここに大きな誤解が潜んでいます。オペレーティングリースは「節税」ではなく、正確には「課税の先送り」です。

損金算入した分は、満期(出口)を迎えたときに「運用益+元本返還」という形で一気に戻ってきます。毎年1億円・5年間で計5億円を損金計上した場合、出口年度には5億円近い益金が一度に発生する計算になります。

出口年度に何が起きるか——3,400万円の衝撃

具体的に試算してみましょう。

年間1億円のオペレーティングリースを契約していたとします。5年後の満期年度、仮に5億円の益金が一括で計上されます。その年の通常利益と合わせれば、課税所得は一気に膨れ上がります。

法人の実効税率はおよそ34%。益金が1億円増えるだけで、約3,400万円の追加課税が生じる計算です。毎年の節税で手元に残したキャッシュが、出口年度にまとめて税務署に向かうイメージです。

「節税できていた」と思っていたお金が、出口年度に一気に「精算」を求められる——これがオペレーティングリース最大の落とし穴です。それでも多くの経営者がこの罠にはまるのは、加入時に出口設計まで考えていないからです。提案する側も「今すぐ節税になる」という部分を前面に出しがちで、出口の話はあとまわしになりやすい。

対策は「出口年度の設計」が9割

では、どう備えればいいのか。答えはシンプルで、「出口年度に意図的に損金を積む」ことです。主な対策は3つあります。

① 退職金の支給を重ねる

経営者や役員の退職金は、支給した年度に全額損金算入できます。出口年度に合わせて退職金を支給し、益金と相殺するのが王道の対策です。退職金の水準は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で算出されるため、長年の経営者であれば数千万〜数億円規模になることもあります。ただし役員退職金規程の整備が前提になりますので、事前の準備が不可欠です。

② 設備投資で課税所得を圧縮する

出口年度に設備投資を行えば、減価償却費や即時償却・特別償却の特例を活用できます。本社の移転、機械設備の更新など、もともと予定していた投資があれば、出口年度に計画的に前倒しするだけで効果が出ます。「節税のためだけの不要な投資」は当然NGですが、事業上必要な支出を出口年度に集中させるのは合理的な判断です。

③ 持株会社スキームと組み合わせる

持株会社(ホールディングス)を活用して、グループ間で益金を分散させる方法もあります。1社に集中する課税所得を複数法人に薄められれば、実効税率の累進効果を抑えることができます。設計が複雑になるため、オペレーティングリース加入の段階から税理士・公認会計士と出口まで含めた全体設計を組むのが理想です。

今すぐ出口日程を確認してほしい

オペレーティングリースに加入している経営者に、一つお願いがあります。

「自分の契約の満期(出口)は、いつか?」

これを今すぐ確認してください。出口まで5年・10年ある場合は、まだ対策を立てる時間があります。しかし2〜3年後に迫っているなら、すぐに動き出す必要があります。

退職金規程の整備には時間がかかります。設備投資の計画も、1〜2年前から動くのが理想です。「出口が見えてから焦って準備する」では、対策が間に合わないことがあります。

契約書を引っ張り出して、出口日程と想定益金の金額を確認する——それだけで、数千万円単位の税負担が変わってきます。まだ時間があるうちに、顧問税理士に「出口の損金計画」を相談しておくことを強くおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。