先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。\n\n「5年前に税理士に勧められて航空機リースに2億円入れたんですよ。当時は節税できて最高だと思ってたんですが……今年、えらいことになって」\n\n話を聞けば、今期に2億円が一括で益計上され、約7000万円の税負担が突然降りかかってきたというのです。「節税した意味がまったくない」と、社長の表情は青ざめていました。\n\nこれは決して他人事ではありません。オペレーティングリースを使った節税スキームには、知っておかないと痛い目を見る「出口の落とし穴」があります。今日はその仕組みと対策を、できるだけ分かりやすくお伝えします。\n\n## そもそも、なぜ節税できるのか\n\nオペレーティングリース(航空機・船舶・コンテナなどを対象にした大型リース)は、出資した初年度や初期数年で多額の損金を計上できる仕組みです。\n\n仮に2億円を出資すると、最初の1〜3年で損失を前倒し計上できるため、利益が出ている会社にとっては一時的な節税効果が非常に大きい。「今期の利益が膨らんでいる」「設備投資がひと段落した」という局面で、顧問税理士から提案されるケースが多いのはそのためです。\n\nただし、ここで多くの社長が見落とすことがあります。それは「損金の先食いに過ぎない」という本質です。\n\n## 出口で必ず”回収”される\n\nリースが終了するタイミング(一般的に5〜7年後)、それまでに計上してきた損失分が、まとめて雑収入として戻ってきます。これを「出口課税」と呼びます。\n\n冒頭の山田社長の例で言えば、2億円の損金を作った分、出口で2億円が一括益計上される。実効税率が約35%とすると、7000万円の税負担が一気に発生する計算です。\n\n「節税」というより「課税の繰り延べ」と表現した方が正確で、リース期間中にキャッシュを手元に残しておける点に価値があります。しかし出口の設計を怠ると、「あのとき節税しなければよかった」という事態に陥ります。\n\n## 対策は「出口に損金を重ねる」設計\n\nでは、どうすればよいのか。結論を言えば、リースが終了するタイミングに合わせて、別の損金を意図的に作ることです。\n\n具体的に有効な手段としては、次のようなものが挙げられます。\n\n- 大型設備投資:工場の機械更新や設備の入れ替えによる減価償却費の積み上げ\n- M&A後の減損処理:買収した会社の資産評価見直しによる損失計上\n- 別のリースの仕込み:出口のタイミングに合わせて新たなリースをスタートさせ、益と損を相殺\n\nいずれも「その年だけ突発的に使える」ものではなく、2〜3年前から逆算して準備が必要です。だからこそ、出口まで含めた5〜7年の資金・税務計画が不可欠になります。\n\n## 「節税商品」を買う前に確認すべきこと\n\nオペレーティングリースに限らず、節税効果の大きい商品には必ず「出口」があります。その出口がいつ来るのか、そのとき会社はどんな状態になっているのか、益を吸収できるだけの損金を準備できるのか——これを事前にシミュレーションしているかどうかで、同じ商品でも「成功」と「後悔」に分かれます。\n\n「提案されたから入った」「とりあえず今期の税金を減らしたかった」という理由だけで判断すると、5年後に思わぬ請求書が届くことになります。\n\n出口課税のタイミングで「手元に何億円キャッシュがあるか」「そのとき別の損金が作れるか」を、今から逆算して考えておくことが本当の節税戦略です。\n\n## 今、リースに入っている社長へ\n\n現在すでにオペレーティングリースに出資中であれば、まず「出口はいつか」を確認してください。そしてそのタイミングから逆算して、設備投資や事業計画を組み直す余地がないかを税理士と相談してみてください。\n\nまだ間に合うケースは意外と多いです。逆に、出口の1〜2年前から動いても手遅れになることもあります。早めに動くほど選択肢は広がります。\n\n節税は「入口」だけでなく「出口」まで設計して、はじめて本物です。今期の利益対策を検討している社長は、ぜひ出口戦略もセットで税理士に確認してみてください。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。