先日、製造業を営む社長からこんな話を聞きました。「毎年きっちり税金を払っているのに、手元に残るお金がどんどん少なくなっている気がする」と。決算書を見せてもらったら、実効税率が33%を超えていました。それ、もしかしたら大きく改善できるかもしれません。

「税額控除」は、節税の中でも別格の存在

節税の手法はいろいろありますが、大きく分けると「利益を減らす」ものと「税金そのものを減らす」ものの2種類があります。

経費を積み増して課税所得を圧縮するのは前者の発想です。一方、税額控除は後者——つまり計算された税額から直接、金額を差し引く仕組みです。効果の大きさがまったく違います。

極端な話、利益が同じでも、税額控除をうまく使えばそのまま納税額が数百万円単位で変わってくることがあります。これが「節税の中でも別格」と言われる理由です。

研究開発費に税額控除が使える、という事実

日本には「試験研究費の税額控除制度」という仕組みがあります。簡単に言うと、研究開発に使った費用の一定割合を、法人税額から直接引いていいですよ、という国の制度です。

「うちは研究所なんか持っていないから関係ない」と思った社長、ちょっと待ってください。この制度が対象とする活動は、思いのほか広く解釈されています。

具体的には、新しい製品の試作や改良、社内で開発しているITシステム・ソフトウェア、新素材や新製法の検証なども含まれます。「すでにやっていること」がそのまま対象になるケースも多いのです。

年商10億・利益2億の会社でシミュレーションすると

少し具体的な数字で考えてみましょう。年商10億円、税引前利益が2億円の会社があるとします。通常、法人税等の実効税率は約33〜34%ですから、税負担は6,600万〜6,800万円ほどになります。

ここで、年間5,000万円をR&D(研究開発)に投じていたとします。控除率は会社の規模や試験研究費の増減によって変わりますが、仮に10〜14%の控除が認められれば、500万〜700万円が税額から直接引けることになります。

さらに増加試験研究費の控除や、売上比率が高い場合の特例なども組み合わせると、控除額が1,000万〜2,000万円規模に達するケースもあります。結果として、実効税率が28〜29%まで下がる——つまり20%台に突入するシナリオが、決して非現実的ではないのです。

「そんな制度、うちの税理士は教えてくれなかった」

これは実際によく聞く声です。顧問税理士が中小企業の一般的な申告業務をメインにしている場合、R&D税制のような特殊な控除制度は提案の対象外になっていることがあります。

制度を使うには、どの費用が試験研究費に該当するか、社内でどのように整理・記録しておくべきか、といった実務上の準備も必要です。申告書への添付書類も求められます。

「うちの会社のどの活動が対象になるか」を正確に判断するには、R&D税制に詳しい税理士や、税務専門のアドバイザーに相談するのが確実です。「自分ではわからない」で放置するには、あまりにももったいない制度です。

手を動かすタイミングは「今期中」

この制度は、当期に発生した試験研究費に対して当期の税額から控除する形をとります。つまり、決算を終えてから「去年分に使えないか」と考えても遅いのです。

今まさに開発投資や製品改良に費用をかけているなら、その内容をきちんと記録し、試験研究費として整理できるか今すぐ確認する価値があります。年度の後半になればなるほど、対策の選択肢は狭まります。

法人税を30%以上払い続けているとしたら、それは「制度を知らなかった」だけかもしれません。R&D税制は、使える会社が使いきれていない代表的な制度のひとつです。まずは今期の試験研究費がいくらあるか、顧問税理士に確認することから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。