先日、年商8億円の建設会社を経営する社長からこんな相談を受けました。

「毎年1,000万円の保険料を払っているのに、税理士から『損金は500万円だけです』と言われた。何かもっといい方法はないですか?」

これ、実はよくあるパターンなんです。保険に加入しているのは正しい判断なのですが、「1種類で完結させている」ことが損をしている原因になっていることがあります。

1種類だけ加入する社長と、組み合わせる社長の差

多くの社長が最初に勧められるのは、単体の法人保険です。加入自体は悪くないのですが、一般的な法人保険の損金算入割合は保険料の50%以下に抑えられているケースが多い。年間1,000万円を払い続けても、課税所得を減らせるのは500万円止まりというわけです。

一方で、保険の「組み合わせ」を知っている社長は発想が違います。逓増定期保険・長期平準定期保険・養老保険の3種類を並べて使い、それぞれの損金算入タイミングと解約返戻金のピークを意図的にずらして設計するのです。

3種類の保険をどう組み合わせるか

ざっくりと整理すると、それぞれの保険の特徴はこうです。

逓増定期保険は、前半に保険料の一部が損金に算入され、後半になるにつれて解約返戻率が高まる設計です。役員の退職が見えてきた時期に解約することで、まとまった返戻金を受け取れます。

長期平準定期保険は、比較的長期にわたって毎期コンスタントに損金を積み重ねていける保険です。10年・15年単位でじっくり積み上げたいときに向いています。

養老保険は、満期返戻金があるタイプで、福利厚生の文脈で使われることが多い。従業員の死亡保障と組み合わせつつ、会社の資産として積み立てる設計も可能です。

この3つを組み合わせることで、毎期の損金を厚くしつつ、役員退職のタイミングで解約返戻金が一気に積み上がるように設計できます。年商10億円規模の会社であれば、10年で退職金原資3億円を損金で作る設計も選択肢のひとつになってきます。

2019年の税制改正を忘れずに

ここで必ず触れておかなければならないのが、2019年の税制改正です。それ以前に流行していた「高返戻率型」の法人保険は、返戻率が高い反面、損金算入ができる割合も大きいという商品が多く存在していました。

しかし2019年以降、国税庁が通達を見直し、返戻率が高い商品ほど損金算入できる割合が下がる仕組みに変わりました。「返戻率85%以上」の商品は、損金算入が40%以下に制限されるケースもあります。

古い情報をもとに設計してしまうと、想定していた損金効果が大きく下回ることがある。特に、数年前に加入した設計をそのまま使い回そうとしている場合は要注意です。

設計の精度が、10年後の退職金に直結する

保険の組み合わせ設計は、「今期の節税」だけで考えると必ず失敗します。役員退職のタイミング、解約返戻のピーク、その時点の税率、退職所得控除の計算まで含めて初めて最適解が出ます。

たとえば解約返戻金を会社で受け取ると益金になりますが、同じタイミングで退職金を支払えば損金と相殺できます。この「受け取りと支出のタイミング合わせ」こそが、保険設計のキモです。

ひとつの保険商品を単体で使っていると、このタイミング調整がどうしても難しくなる。複数を組み合わせることで、年ごとの損金の平準化と、退職時の集中的な効果の両立が可能になるわけです。

今の設計を一度見直してほしい

法人保険にすでに加入している社長も、これから検討している社長も、一度「何を・いつ・どのタイミングで解約するか」まで含めた出口設計を専門家と確認してみてください。

特に、加入してから5年以上経過している保険がある場合、現行の税制下での損金算入割合と返戻率のバランスが崩れていないか確認する価値があります。設計の見直しだけで、同じ保険料でも手元に残るお金が大きく変わることがあります。

保険は加入したら終わりではなく、会社の成長ステージや役員の年齢に合わせて継続的に見直すもの。そう捉えるだけで、10年後のキャッシュフローが別物になってきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。